采配は「振る」?「振るう」?

 采配を振る/采配を振るう……皆さんは、どちらの言い方を使いますか?
 文化庁が毎年行っている「国語に関する世論調査」は、慣用句の使われ方や新しい表現に対する世代間の意識の違いなど、「言葉の世相」を映し出す調査として話題になります。今回の調査では、行政機関でよく使われる外来語が不評なことも分かりました。

「タメ」「ガチ」聞いたことがない70歳以上3割

 今回の調査は3月、全国の16歳以上の男女3,579人を対象に個別面接調査で実施。2,022人から有効回答を得て結果を分析したものです。
 それによると、国語について「非常に関心がある」(17.0%)と「ある程度関心がある」(59.2%)を合わせると76.3%になり、多くの人が言葉への関心を寄せていました。
 一方、新しい表現について、聞いたことがあるか、使ったことがあるかを尋ねると、「上から目線」の「目線」は「使うことがある」が57.4%で「聞いたことがない」は4.8%と、広く浸透しつつある表現であることが明らかになりました。「聞いたことがない」の回答が最も高かったのは「後ろ倒し」(42.5%)で、「開始の時期を後ろ倒しにする」などと「使うことがある」のは12.3%にとどまりました。

年齢別による差も明らかになっています。「タメ口で話をする」の「タメ」は、70歳以上で「聞いたことがない」が他の年代より高く(35.1%)、年代が下がるに従って「使うことがある」が高くなります。「ガチで勝負をする」の「ガチ」、「自分の立ち位置を確認する」の「立ち位置」も同じような傾向が見られました。

本来の言い方から逆転現象も

 意味がわからない外来語として、「コンソーシアム(共同事業体)」は52.6%、「インバウンド(訪日外国人旅行(者))」は51.7%に上っています。「フォローアップ(追跡調査)」や「パブリックコメント(意見公募)」は、約6割の人が漢字を用いた語を用いたほうがいいと答えています。これらは、官公庁が用いる「お役所言葉」でもあります。
 さて、タイトルの「采配」ですが、「どちらの言い方を使うか」を質問したところ、「振る」を使う人は32.2%、「振るう」を使う人は56.9%でした。主に本来の言い方とされているのは「振る」なのですが、逆転して「采配を振るう」を使う人が多くなっています。

 その他、「溜飲(りゅういん)を下げる/溜飲(りゅういん)を晴らす」、「白羽の矢が立つ/白羽の矢が当たる」(いずれも前者が本来の言い方)など、「あれ? どちらだっけ」と思わず言い直してみたくなる絶妙な質問が出題されています。「どちらの意味か」「どちらを使うか」は毎年、質問される表現が異なります。親子で見てみるのも会話のネタになりますし、クイズ感覚で「データを読み解く」練習にもなりそうです。

(筆者:長尾康子)

※文化庁 国語に関する世論調査
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/index.html

※文化庁 国語に関する世論調査 平成29年度結果の概要
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/r1393038_01.pdf

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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