教育資金の贈与非課税措置ってどんな制度?

子どもや孫に教育資金を贈与すると、贈与税が非課税になる制度があります。2013年4月に始まり、19年3月末までの期間が限られた措置です。文部科学省はこの制度の恒久化を財務省に求めていますが、延長されるかどうかの見通しは確実ではありません。
教育費を祖父母から援助してもらいたいのなら、早めに話し合う必要があります。

1,500万円までの一括贈与が非課税

教育資金の非課税制度は、簡単に言うと「30歳未満の子どもか孫に、教育資金として1,500万円までを贈与しても、贈与税がかからない」という制度です。この制度を利用する際には、信託銀行などの金融機関に子どもや孫の名義で口座を設け、資金を預けます。そして入学金や授業料などお金が必要になったときに、口座から引き出して使います。
資金面でゆとりのある高齢者層にとって、子どもや孫の教育費を援助でき、次の世代への相続税対策にもなる制度として人気が高まっています。

一般社団法人信託協会の調べによると、教育資金贈与信託の契約数は右肩上がりで伸びており、2018年3月には累計契約数19万4,336件、累計財産設定額は1兆3,735億円にも達しています。制度が始まったのは2013年4月からでしたが、当初の期限を延長して19年3月末まで続くことになりました。

幅広く活用できるが注意点も

この教育資金は、幅広い用途に使えるのがメリットです。まず学校の入学金や授業料、施設設備費や、学用品などです。幼稚園・保育所から大学院まで、専修学校や外国の学校などでも使えます。学習塾やスポーツ教室の費用や、それにかかる物品の購入にも使えます。2015年度からは通学定期代や留学渡航費も、教育費として認められることになりました。
デメリットは、教育資金を口座から引き出すときに、領収書を信託銀行に提出しなければならないことです。また、ボランティア活動やインターンシップにはこの資金を使うことができません。しかも非課税の措置は、贈与を受ける子どもや孫が30歳になるまでです。その時に口座に残った資金は課税対象になりますから、確実な資金計画が必要になってきます。

とはいえ、2016年からは支払金額が1万円以下で、かつその年中における合計支払額が24万円以下のものは、明細を提出すれば領収書の提出の必要はなくなりました。スマートフォン(スマホ)で領収書を撮影して提出できるアプリが登場するなど、煩雑さも軽減されてきています。

文部科学省はこの制度の恒久化を財務省に求めていますが、延長されるかどうかは今のところ確実ではありません。また、こうした「教育減税」を長く続けると、「親世代の経済力が子どもの教育環境の格差を生む」ことになりかねない……と懸念する声もあります。
祖父母世代も長寿化で「老後」が長くなっています。先々の生活不安に備えるシニアも多いので、教育資金として贈与を考えてもらいたい場合は、家族で十分に話し合う必要があるでしょう。

(筆者:長尾康子)

文部科学省 教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置
http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/zeisei/1332772.htm

(一社)信託協会 教育資金贈与信託
https://www.shintaku-kyokai.or.jp/products/individual/assetsuccession/education.html

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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