日本発祥の「母子手帳」が開発途上国の母子健康に役立つ
グローバル化が進む社会で、私たちは世界との相互依存関係を深めています。今後一層グローバル化が進む中で豊かに生きていくために、子どもたちはどんなことを知り、学び、身に付けていけばよいのでしょうか。
JICAでは開発途上国への支援を行う一方で、途上国が、そして地球が抱えるさまざまな問題について多くの人に知ってもらうために国際理解教育支援も行っています。
今回は、途上国の課題解決に日本の知恵や強みを活用して行っている国際協力「母子手帳」制度についてお伝えします。
JICA(国際協力機構)はどんなことをしている?
JICA(国際協力機構)は途上国の社会経済への開発協力をする独立行政法人です。途上国への開発協力と一口に言ってもその活動は多岐にわたっています。たとえば、医療サービスを受けられない人たちに向けて適切な保健医療を受けられる仕組みづくりをしたり、教育を受けられない人たちに対して教育の段階や国の状況によって質の高い学びが提供されることを目指す取り組みを実施したり、また、グローバル化の急速な進展、気候変動、食料価格の高騰などによる飢餓や食料不足を解消するために、持続可能な農業開発を目指す協力などを行っています。
こうした問題に対しJICAでは、技術協力・有償資金協力・無償資金協力という3つの援助手法のほか、ボランティアや国際緊急援助隊の派遣など多方面からの協力を行っているのです。
その国の命の問題の改善にもつながる「母子保健」
世界には、さまざまな事情で学校に行けず教育の受けられない子どもがおり、教育が受けられないことによって、文字が読めなかったり、必要な知識を得られなかったりして不利益を被り、貧しいままの生活を強いられているという現状があります。そして、知識不足は命に直接関わる重大な問題でもあります。
命のはじまりとなる妊産婦と新生児の死亡率が高い理由としては、栄養不良や医療ケアを満足に受けられないことのほかに、安全な出産のための知識不足という問題があります。妊娠・出産・育児は人間が存続するうえで絶対に欠かせない行為であるにもかかわらず、正しい情報へのアクセス不足やコストがかかることにより、命が危険にさらされてしまうのです。母子保健の改善は、その国の命の問題の改善につながることでもあります。
世界で活躍する、日本発祥の「母子手帳」
そんな中で、活躍しているのが日本発祥の「母子手帳(母子健康手帳)」です。日本の母子手帳には出産までの健康状況、産婦人科や助産院などでの問診や検診、出産時の大事な事項、出産後の子どもの予防接種や成長の様子が記録され、出産リスクの軽減や、子どもの健全な成長につながるものとして重要な役割を果たしています。
1990年代、日本に来て母子手帳のことを知ったインドネシア人医師は母国にも母子手帳制度を導入したいと熱望し、JICAとともに母子手帳プロジェクトを実施。今ではすべての州で母子手帳が使われるようになり、国全体で年間推定される妊婦全員に配布できる数の母子手帳が印刷されるまでになりました。海外で日本の母子手帳を導入する際には、日本の母子手帳を訳すことはしません。識字率が低い国のものはイラストを多用して伝わりやすくしたり、その国独自のカードを取り入れたりと工夫をし、現地の事情に合わせた母子手帳を開発します。母子手帳の果たす役割は大きく、妊産婦や5歳未満児の死亡改善に寄与していると考えられています。
インドネシアだけでなく、アジアのほかの国など世界中の様々な国に母子手帳は広がりはじめています。
関連HP https://www.jica.go.jp/activities/issues/health/mch_handbook/index.html
動画で学ぶ https://www.youtube.com/watch?v=Sp74hcExTZY&feature=youtu.be
資料編 https://www.jica.go.jp/activities/issues/health/mch_handbook/materials.html
取材協力:JICA(国際協力機構)