「環境にやさしい社会」への教育とは

地球上の人口は、2050年には90億人になると推計されています。この先も人類が豊かで快適な生活を維持するためには、環境への負荷が少ない社会を作ることが大切です。そうした意識を子どもたちに育むために、新しい学習指導要領の下でも環境教育の推進が求められています。

環境教育促進法の成果と課題

環境教育が広まったのは、「総合的な学習の時間」(総合学習)が始まった2000年代初めごろです。総合学習で取り扱う内容として、学習指導要領に「環境」のテーマが例示されたことにより、体験を通して自然や環境について学ぶ学校が増えました。リサイクル活動をしたり、ビオトープを校庭に作ったり、川の水質調査や地球温暖化について調べたりした経験がある保護者のかたもいるのではないでしょうか。

国は2011年に「環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律(環境教育促進法)」を定め、自然体験の機会の場の認定制度や、環境教育を進めるリーダーの育成をしてきました。
施行から5年たち、学校教育では▽ESD(持続可能な開発のための教育)を行う「ユネスコスクール」が増加した▽ユネスコスクールでは実践を通じて教員・児童生徒の変容があった▽環境と国際理解の要素を地域特性で関連付けたカリキュラム編成ができた……などの成果があったと報告しています。
今後の課題として、▽ESDの視点からの環境教育の推進▽体験活動や各教科等の学びをつなげる実践▽学校全体としての取組となるような研修カリキュラムの開発・普及……などが挙がっています。

新指導要領の「主体的・対話的で深い学び」で

こうした施行状況を踏まえて、今年6月、国は環境教育促進法の基本方針を変更しました。中でも小中学校の新学習指導要領における「主体的・対話的で深い学び」や「カリキュラム・マネジメント」と結び付けた環境教育の実践を求めています。
環境省は、学校向け資料「学びをつなげる環境教育」を作成し、学校の先生などを対象とした研修「教職員等環境教育・学習推進リーダー育成研修」を開催してきましたが、今年度は多忙な教員のために学校や教育委員会などに講師を派遣する研修を立ち上げ、充実を図りました。

この研修では、▽学校のカリキュラムにどのように環境教育を落とし込んでいくか▽子どもたちが参加する自然体験などを主体的・対話的で深い学びにつなげていくにはどのような授業ができるのか……を体験の場を提供する企業や団体と共に学んでいきます。
環境教育は、総合学習や理科、社会などの枠を超えて「教科横断的」に学ぶ側面が大きいテーマです。しかし一つの「教科」ではなかったために、各校の取り組みにばらつきが出たり、教材づくりや活動の計画の大変さからイベント的なものに終始してしまったりするケースも見られました。

今回の新学習指導要領で、思考力や判断力、課題解決力を育成する取り組みとして、環境教育がもともと持っていた特性が見直され、各校の実践がさらに充実したものになることが期待されます。

(筆者:長尾康子)

環境省 「環境保全活動、環境保全の意欲の増進及び環境教育並びに協働取組の推進に関する基本的な方針」閣議決定
https://edu.env.go.jp/law.html

文部科学省「環境保全活動、環境保全の意欲の増進及び環境教育並びに協働取組の推進に関する基本的な方針」の変更の閣議決定について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/06/1406439.htm

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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