2020年度の国立大学の英語入試はどう変わる? ~国立大学協会が公表した民間の英語の資格・検定試験の活用の参考例に見る、2020年度実施の国立大学の英語入試~

2018年6月12日に、すべての国立大学が加入している国立大学協会(以下、国大協)から、大学入学共通テスト(2020年度より実施されるセンター試験の後継試験。以下、共通テスト)の枠組みにおける民間の英語の資格・検定試験(以下、認定試験)の活用の参考例が示されました。そこには、2020年度から実施される国立大学の入試における、認定試験の結果の共通テストへの加点についての点数例も示されています。今回発表された参考例がどのような意味を持つのか、お子さんの英語学習にどのような影響を与えるのかを、今回は整理していきます。

なお、本文中にCEFRという英語力に関する指標が出てきますので、あらかじめ簡単に解説します。CEFRとは、ヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages)の略称で、語学シラバスやカリキュラムの手引きの作成、学習指導教材の編集、外国語運用能力の評価のために、透明性が高く、包括的な基盤を提供するものとして、2001 年に欧州評議会が発表しました。A(基礎段階の言語使用者)、B(自立した言語使用者)、C(熟達した言語使用者)ごとに2レベル、計6レベルが設定されています。

国立大学の入試における認定試験の結果の活用方法は3つ

国大協は、国立大学の入試における認定試験の活用方針を次のように示しています。

共通テストの枠組みにおける認定試験結果の活用については、各大学・学部等の方針に基づき、次の方法のいずれかを基本とする。

① 認定試験の結果を出願資格として活用する。
② 共通テストの英語試験の得点に加点する形で活用する。
③ ①と②の両方を組み合わせて活用する。

今回の国大協からの発表では、①~③の活用にあたっての参考例が示されました。以下、その詳細を見ていきます。

出願資格の例として示されたのは、CEFR「A2以上」

活用方法の1つめである出願資格について、「各大学・学部等の方針により、CEFR対照表(※)に基づき、その一定水準(例えばA2)以上を受験資格とすることが考えられる」と具体的な水準が例示されました。A2とは、ベネッセのGTECのスコアで言うと、690-959となりますが、CEFRの各水準のレベル感は、文部科学省発表の「各資格・検定試験とCEFRとの対照表」(※)でご確認ください。

※「各資格・検定試験とCEFRとの対照表」はこちら(前回同様リンクを貼る)をご参照ください。

もし、お子さんが志望される国立大学が出願資格をA2以上とした場合、その大学の受験資格が得られるかどうかは、認定試験の結果がA2の水準に到達しているかで決まることになりますので、英語学習の重要性が今後ますます高まると言えるでしょう。

認定試験の結果が英語全体の満点に占める割合の例として、「2割以上」と示される

活用方法の2つめである共通テストへの加点については、英語4技能の総合的な評価を重視し、受験生の4技能の学習への動機を高める点から、2技能を測る共通テストと4技能を測る認定試験の結果を合わせた英語全体の満点に占める認定試験の結果の割合の例として、「2割以上」という数字が示されました。例えば、認定試験の結果の英語全体の満点に占める割合が2割で、共通テストの英語試験の配点が200点であった場合、加点される認定試験の最高点は50点になります(図)。250点中最高50点が認定試験の結果というのは決して無視できない割合です。そのため、2割以上の加点の幅となった場合は、4技能の差が英語や教科全体の差に少なからず影響を与えることになります。

【図】英語全体の満点に占める認定試験の結果の割合が2割の場合

活用方法の3つめの出願資格と加点の組み合わせについては、出願資格としてCEFRの一定の水準(例えば、CEFRのA2以上)を設定し、それを超える水準(例えば、CEFRのB1以上)に達している場合は、水準ごとに定めた点数を共通テストの英語の成績に加点することとなります。自学で必要な英語4技能の最低水準を出願資格として規定しつつ、より高い英語力を持つ学生を求める大学は、この活用方法を検討するものと考えられます。

現在、国大協が提示した3つの活用方法例を参考に、各国立大学がそれぞれの意志を持って認定試験の活用方法を検討しているところですが、今回示された認定試験の出願資格の具体的な水準や加点の幅はあくまで例です。しかし、具体的な数値で示されたことで、各国立大学が自学の入試における出願資格の水準や加点の幅を検討する上で、その数値が目安になっていくことが考えられます。今後は、認定試験の活用の件も含め、各国立大学が2020年度実施の入試についての具体的な方針を、2018年度中に順次公表していくことになります。
転載元:Benesseマナビジョン(高校生の進路・進学を応援する情報サイト)


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

ベネッセ教育総合研究所からの所感

プロフィール

小泉和義

小泉和義

ベネッセ教育総合研究所・主任研究員。全国の小学校、中学校、高等学校などの現場を取材し、子どもたちの実態や学校での指導課題を踏まえ、「今」と「これから」の教育に必要なことは何かを発信し続けている。

【中学1年生~高校1年生の保護者の方へ】

上記で示されている内容変化の影響をダイレクトに受ける学年です(年度毎に多少の制度修正はあるかもしれません)。民間の英語の資格・検定試験が活用されることにより、いまの大学入試で問われている「聞く」「読む」の2技能だけでなく、「話す」「書く」を含めた4技能の力が問われることになります。
今回の発表は国立大学に関わるものですが、国立大と同じ地域の公立大や併願を意識する私立大の入試にも影響を与え、大学入試全体として英語は「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能を問う入試にシフトしていくことが予想されます。
そのため、学校、家庭での学びを通して4技能の力を伸ばす学習が不可欠です。
また、今後、各大学から発表される具体的な入試方法をしっかりと理解しておくことも大切です。

【小学生以下のお子さまの保護者の方へ】

今の小6生が受験する大学入試以降は、英語は大学入試センターが問題を作成せず、民間の資格・検定試験のみが活用されるようになり、そこで4技能の力が測られます。また、大学入試が変わることで高校の授業が影響を受け、高校入試でも4技能を問うことも予測されます。たとえば、すでに東京都などでは、公立高校入試で4技能を測る計画を発表をしています。
小学校では、2020年度から始まる新学習指導要領の先行実施・移行措置として、3、4年生で外国語活動の授業が始まり、5,6年生では、教科として英語を始めた学校や、外国語活動に加えて教科の英語を始めた学校もあります。まずは、小学生らしく体験的に英語を使う授業の中で、英語の学びに興味、関心を持って取り組めるようになることが大切です。

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