知っていますか?街の中のバリアフリー

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、体や目や耳の不自由な人が安心して移動できる、やさしい街づくりが進んでいます。しかし、建物や施設が使いやすくなっても、街に住む人が「バリア」について理解しなければ、本当の意味でのバリアフリーは実現しません。外出の機会にバリアフリーの工夫を探しながら、親子で「誰もが住みよい街」について考えてみませんか。

東京オリパラに向けて進む整備

目の見えない人が駅の改札を通るのに点字ブロックを使ったり、車いすの人がスロープを使って建物の中に入ったりするのを見たことがあると思います。障害者が暮らしやすいように点字ブロックやスロープなどを設置して、障壁(バリア)を取り払うことを「バリアフリー」と言います。
このほど、公共交通機関でバリアフリー化を一層進めるための改正バリアフリー法が成立しました。公共交通機関の事業者に乗り場の段差をなくしたり、エレベーターを設置したりすることを促す法律です。2020年の東京オリンピック・パラリンピック(オリパラ)に向けて今後ハード面の整備が進んでいくものと思われます。

知識や経験で「心」の面を乗り越える

建物や施設を使いやすくするバリアフリーと同じくらい大事だと言われているのが、ソフト面の「心のバリアフリー」です。たとえば、点字ブロックの上に自転車が止めてあったら、目の見えない人は気づかないので危険です。しかし、自転車を利用する人が点字ブロックや視覚障害について知っていれば、自転車を別の場所に置くことができ、見えない人は安心して点字ブロックを利用できます。健常者の無理解や不適切な行動も、バリアになりうるのです。

内閣府が2017年3月に発表したバリアフリーに関する意識調査では、街で障害者が困っている場合に「手助けをしたいと思う」と答えた人の割合は74%に上りましたが、その中で実際に「手助けをしている」人の割合は50.6%にとどまりました。「ほとんど手助けできていない」と答えた人にその理由を聞いたところ、「これまで障害者と接する機会が少なかったから」(42%)、「どのように声をかけて良いかわからないから」(34%)となっています。

障害のある人についての具体的な知識や経験があれば、このような意識の差は小さくなっていくのではないでしょうか。国は東京オリパラに向けて示した行動計画の中で「心のバリアフリー」を広めるために、学校や地域、企業などが積極的に啓発に取り組むことを呼び掛けています。もしかしたら、お子さんの学校でも障害者理解の取り組みが充実してくるかもしれません。

障害者にどのような配慮をしたらよいのか、内閣府はデータベースを作るなどして具体例を提供しています。親子で出かける際には、街のどこにバリアがあるのか探したり、想像したりしながら乗り物や建物を利用してみてはどうでしょうか。段差のない道路が、車いすの人だけでなく、高齢者やベビーカーを使う人や、重いキャリーバッグを持った外国人旅行者など、実はより多くの人にとって使いやすいものになることに気づくはずです。

(筆者:長尾康子)

※内閣府「バリアフリー・ユニバーサルデザインに関する意識調査報告書」(平成29年3月公表)
http://www8.cao.go.jp/souki/barrier-free/tyosa_kenkyu/index.html

※合理的配慮等具体例データ集「合理的配慮サーチ」
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/index.html

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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