共通テストの英語資格・検定試験、4技能たっぷりの授業が前提
2021年1月から大学入試センター試験に代わって実施される「大学入学共通テスト」では、「聞く・読む・話す・書く」の4技能をすべて評価するため、外部の資格・検定試験を併用することになっています。
大学入試センターは3月26日、7団体から申請のあった10資格・検定試験24種類ののうち、9試験23種類の参加を認めました(条件付きも含む)。今後の英語学習は、どうすればよいのでしょうか。
文科省の強い姿勢の表れ?
今回参加が認められた資格・検定試験は、
▽ベネッセコーポレーション「GTEC」(Advanced、Basic、Core、CBT)
▽ケンブリッジ大学英語検定機構「ケンブリッジ英語検定」
▽Educational Testing Service「TOEFL iBTテスト」
▽国際ビジネスコミュニケーション協会「TOEIC Listening & Reading TestおよびTOEIC Speaking & Writing Tests」
▽日本英語検定協会「TEAP CBT」
▽日本英語検定協会「実用英語技能検定(英検)」(1級、準1級、2級、準2級、3級)
▽ブリティッシュ・カウンシル「IELTS」
の7種類。
象徴的な事例がありました。1963年から実施され、志願者も多い実用英語技能検定(英検)は、申請していた5種類すべての参加が認められたのですが、実施方式は新設の「公開会場実施」「1日完結型」「4技能CBT」(いずれも仮称)に限ることにし、これまでのような「従来型」が認められなかったのです。
従来型は、1次試験で「聞く・読む・書く」の3技能を課し、その合格者のみが「話す」を受検することができる方式です。1次試験は団体受検も可能で、学校などを準会場とすることもできました。しかし、これが、「1回の試験で英語4技能の全てを極端な偏りなく評価するものであること」という参加要件を満たしていないと判断されました。
一方で、全員に4技能を1~2日で課す新設の3方式は認められました。ここからは、大学入試センター・文部科学省が、大学入学者選抜で何としても受験生全員に4技能すべてを問うのだという、強い姿勢をうかがうことができます。
これまでのセンター試験では、「読む」(筆記)・「聞く」(リスニング)の2技能しか評価できませんでした。各大学の個別試験でも、多くは「読む・書く」の2技能です。そのため、本来は4技能を総合的に育成するはずの高校の授業が、依然として文法偏重になっているという指摘が根強くあります。そんな状況を変えようという、強い姿勢です。
ペーパーテストの文法偏重も改め
そうした姿勢は、2〜3月に行われた共通テストの英語試験の試行調査(プレテスト)問題からもうかがうことができます。共通テストの英語では、資格・検定試験を活用する一方、これまでのような筆記・リスニングのテストも、少なくとも現行学習指導要領下の2024年1月までは出題を続けることになっています。
そこでは、「あたかも自分がその場で英語を使ったコミュニケーション活動をしているような感覚を持ちながら取り組むことができました」(高山芳樹・東京学芸大学教授)というような、新機軸の問題が出題されました。
一方、ペーパーテストで「話す・書く」の力を間接的に問う問題として定着してきた、発音・アクセント・語句順序は出題されませんでした。それらが「『受験英語』の指導を助長していた」(松本茂・立教大学教授)からです。
プレテストはあくまで試行のため、本テストでもその通りの出題傾向や問題配分になるとは限りません。難易度も下がる可能性があります。しかし、実際のコミュニケーションや言語使用場面を反映したものであることに変わりはないでしょう。
現在でも高校の授業では、英語で行うことを基本とし、4技能をフル活用したコミュニケーション能力の育成を図っているはずです。共通テスト英語にしても資格・検定試験にしても、4技能たっぷりの授業を通して「使える英語力」を身に付けることこそが、対策の王道だと言えるでしょう。
※「大学入試英語成績提供システム」の参加要件確認結果について
http://www.dnc.ac.jp/news/20180326-02.html
※「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」検討・準備グループ
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/083/index.htm
※第12回配布資料は間もなくアップされる見込み。
2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。