プログラミング教育導入 コンピュータとどう主体的につきあうか 小学校の教育

今回の学習指導要領改訂(2018年度から移行措置期間、2020年度から小学校で完全実施)による小学校での教育の大きな変更点は、「外国語を、小学校5・6年生から教科とする」「道徳を教科とする」「プログラミング教育を導入する」の三つです。

新学習指導要領作成の中核的メンバーであり、近年の教育改革の背景がよく理解できると評判の『「資質・能力」と学びのメカニズム』(東洋館出版社)の著者・奈須正裕先生(上智大学)に、今回はこの三つの変更点のうち「プログラミング」についてうかがいました。

目標は「プログラミング的な思考法」を身につけること

今回の学習指導要領に関する議論の中で、「プログラミング」は急浮上したテーマです。
その背景には、ここ2、3年の急速なICT化やAI(人工知能)化があります。これからの社会を生きる子どもたちにとって、コンピュータと主体的に関わるための知恵を身につけることは不可欠です。プログラミングは、機械に意思を伝えるための「言語」です。
ただし、今回小学校に「プログラミング」という教科ができるわけではありません。算数、理科など複数の教科で扱う見通しですが、コーディングと呼ばれるプログラミング技術そのものの習得を目標とはしません。

小学校でのプログラミングの目標は、プログラミング的な思考法を理解し、感覚的にしっかりと身につけることです。コンピュータ独自の論理や動きを知り、コンピュータとは何か、人とはどう違うかを理解して、コンピュータを主体的に、上手に使いこなせる素地を身につけさせることを目指します。

プログラミングを通して学べる「ものづくり」の感覚

小学校の授業では、絵を描く、音楽を作る、ロボットを動かすなど、コンピュータを使ったプログラミングを実際に体験させる見通しです。コンピュータには、働きかけに対してすぐ反応が返ってくるという特徴があります。「こんな絵が描けるはず」と思ってプログラミングしたのに、全然思っていたような絵にならなかったり、ロボットがうまく動かなかったり。そんなとき、子どもたちは「うわー、変になっちゃった!」「なんだこれ!」などと笑い転げながらプログラムを直していきます。どこかが間違っていたら「全部ダメ」なのではなく、間違っている箇所を突き止めて直していけば、どんどんうまく動くようになっていく。
プログラミングを通して、不完全から完全へ、完全なものももっとより良い状態へ改善していける、というものづくりの感覚や創造のよろこび、柔軟でイノベーティブな学習観や知識観を身につけることができます。これはぜひ、これからの子どもたちにもってほしい感覚なのです。

コンピュータとの上手なつきあい方を学ぶ

プログラミングを始めて、コンピュータがうまく動かないと、子どもたちは「こいつ、今日ボケてる」「機嫌が悪いみたい」などとよく言います。機械を擬人化してみるんですね。しかし実際は、機械は人間のように機嫌を損ねたり誰かを嫌いになったりはしません。
プログラミングが正しければいつまでも文句を言わずに動き、間違っていれば動きません。

プログラミングは機械と意思疎通するための言語です。これからの子どもたちは、今の大人以上に、機械と深く関わる機会が増えてくるはずですから、機械と人間とは何がどう違うか、機械とのコミュニケーションとはどういうものかを、プログラミング体験を通してきちんと知っておく必要があると思います。
アイボやグーグルスピーカーのような、擬人化されたコンピュータに私たちが癒されるのは、人間のように「こちらの気持ちをわかってくれる」からではなく、うまくプログラミングされているからこそです。そこを理解してこそ、AIやバーチャルリアリティとの主体的で建設的なつきあい方ができるのではないでしょうか。

MIT(マサチューセッツ工科大学)が提供するスクラッチをはじめ、無料で手軽にプログラミングを体験できる様々なアプリが出ています。この機会に、保護者の方も遊び感覚で、お子さまと一緒にプログラミングを体験してみるのも良いかもしれませんね。

プロフィール

奈須正裕

奈須正裕

上智大学総合人間科学部教育学科教授。新学習指導要領の作成に携わり、中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会をはじめ、教育課程企画特別部会、総則・評価特別部会などの委員として重要な役割を担う。著書に『「資質・能力」と学びのメカニズム』(東洋館出版社)など。

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