保護者世代よりずっと重い!大学への納付金

進学先の大学などをめぐり、保護者と子どもの間で対立が起きる原因の一つに、大学に対する評価などが、保護者の学生当時と現在とでは大きく変化していることが挙げられます。大学の学費についても同じです。保護者は、自分の学生時代の経験や価値観で子どもの進学問題を判断する傾向があるため、注意が必要です。自分の学生時代と同じ感覚で学費問題を考えていると、思わぬ失敗をする可能性もあります。

私大授業料は1975年の約5倍に

文部科学省の調査結果によると、2016年度に入学した私立大学生が初年度に支払った授業料の平均額は87万7,735円(前年度比1.1%増)で、5年連続の増加となり、比較可能な1975年度以降で過去最高となりました。また、入学料は平均25万3,461円(同1.0%減)、施設設備費は平均18万5,620円(同0.6%増)で、これらを合計した私立大学入学のためにかかる「初年度納付金」は平均131万6,816円(同0.6%増)となっています。
日本の大学の授業料は年々上昇しています。1975年度と2016年度の平均授業料を比べると、国立大学は3万6,000円が53万5,800円(14.9倍)に、公立大学は2万7,847円が53万7,809円(19.3倍)に、私立大学は18万2,677円が87万7,735円(4.8倍)に、それぞれ大きくアップしています。約40年の間に、いかに大学の授業料が高くなっているかわかるでしょう。
大学進学をする子どもを持つ保護者が大学生だったころと推測される1993年度の平均授業料は、国立大学が41万1,600円、公立大学が40万5,840円、私立大学は68万8,046円でしたから、保護者の学生当時とも大きく異なっています。
保護者が自分の学生時代の経験などから子どもの大学学費を想定していると、いざという時に予算が足りないなどの事態にもなりかねません。

望まれる高等教育費の負担軽減策

さらに注意すべきことは、私立大学は学部ごとに学費が違うことです。
先の学生納付金は、あくまで全学部の平均額です。学部の系列ごとに初年度納付金の平均額を見ると、「文・教育」が117万6,847円、「法・商・経」が113万3,308円などで、文系は平均115万863円となります。一方、「理・工」は144万7,682円、「薬」は208万1,075円などで、理科系は平均151万8,333円となっており、初年度納付金が150万円を超えています。さらに高いのは「医」の509万1,266円、「歯」の428万9,239円などで、医歯系は平均479万2,928円となっています。

大学授業料などの上昇を考えれば、大学の学費負担軽減のための施策が必要でしょう。政府は2018年度から、返済の必要がない給付型奨学金制度を本格的にスタートさせますが、対象は住民税非課税世帯などの子ども約2万人に過ぎず、支給額も月額2~4万円とわずかです。
安倍首相は、昨年秋の衆院選後に、幼児教育の無償化とともに、大学など高等教育の学費負担軽減を打ち出しています。幼児教育の無償化は世論の理解をほぼ得ているのに対して、高等教育費の負担軽減は「自己責任」「受益者負担」と反対する声も少なくありません。
しかし、現在の大学授業料などの重い保護者負担を考えれば、すべての家庭を対象にした負担軽減策が強く望まれます。

(筆者:斎藤剛史)

※私立大学等の平成28年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/1399613.htm

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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