コミュニティ・スクール目標達成…なぜ急速に増えた?

文部科学省の調査によると、学校運営に保護者や地域住民が参画するコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)が全国で3,600校(2017<平成29>年4月1日現在)となり、公立小中学校の1割(約3,000校)という政府目標を達成しました。なぜコミュニティ・スクールは急速に増えたのでしょうか。

公立小中学校の1割、3,000校を突破

調査によると、2017(平成29)年4月1日現在で、全国のコミュニティ・スクールの数は、前年度よりも794校増加して3,600校(幼稚園115園、小学校2,300校、中学校1,074校、小中一貫の義務教育学校24校、高校65校、特別支援学校21校、中高一貫の中等教育学校1校)となり、初めて3,000校を突破すると同時に、公立小中学校の1割(約3,000校)をコミュニティ・スクールにするという政府目標を達成しました。

コミュニティ・スクールは、2005(平成17)年度から創設され、保護者や地域住民、教職員などから成る学校運営協議会が、学校の教育課程や予算の承認権、教員人事に対する意見を述べる権限などを持つという制度です。保護者・地域住民、有識者などが学校運営に参画することで、「開かれた学校づくり」を実現するのが狙いです。

政府は第2期教育振興基本計画(2013<平成25>年閣議決定)で、公立小中学校の1割をコミュニティ・スクールにする目標を掲げていました。しかしコミュニティ・スクールの数は、2005(平成17)年度の創設から10(同22)年度になっても全国で629校しか増えなかったこともあり、目標達成は疑問視されてきました。ところが、2012(平成24)年度に1,183校と1,000校を超え、さらに15(同27)年度には2,389校と2,000校を突破、ついに17(同29)年度には3,000校を上回ることになりました。

背景には学校統廃合問題

増加した理由の一つとして、2015(平成27)年12月に中央教育審議会が学校・保護者・地域が協働して子どもの教育に当たる「地域とともにある学校」を答申したこと、これを受けて17(同29)年4月から改正地方教育行政法によりコミュニティ・スクールの設置が教育委員会の努力義務となったことが挙げられます。

しかし、それ以上に大きな理由は、少子化による学校統廃合の進行でしょう。小中学校を統廃合すれば、それまでの地域のつながりが失われ、政府の方針である地方創生に反することになってしまいます。学校を統廃合して新たなコミュニティーをつくるには、新しい学校を核にした地域づくりをしなければなりません。

そのため全国の市区町村で、地域住民が学校運営に参画することで、コミュニティー形成に資する取り組みができるコミュニティ・スクールが注目されるようになりました。つまりコミュニティ・スクールの増加の背景には、学校統廃合と地方創生という二つの流れがあるというわけです。

このためコミュニティ・スクールの変質という事態も起こっています。学校統廃合による新たなコミュニティーづくりのため、教員人事の権限を行使する強力な学校運営協議会は敬遠され、学校ボランティア活動など「学校応援団」的な性格の学校運営協議会が主流となっています。
いずれにしろ、コミュニティ・スクールの増加とともに、「地域とともにある学校」がますます求められることになりそうです。

※コミュニティ・スクールの導入・推進状況(平成29年4月1日)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/community/shitei/detail/1386362.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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