冷房の普及で夏休みの授業も増える!?

夏休みシーズンを間近に控えて、毎日暑い日が続いています。こんな時は、エアコンの効いた室内から出たくないという気持ちになりますが、子どもたちは学校でどう過ごしているでしょうか。文部科学省がまとめた「公立学校施設の空調(冷房)整備設置状況調査」の結果によると、公立小中学校の普通教室の約半数にエアコンが整備されています。学校の冷房機器について考えてみましょう。

学校の設置率が急上昇

調査はおおむね3年に1回の割合で実施しているもので、2017(平成29)年4月1日現在の結果によると、公立小中学校では、通常授業などで使用する普通教室38万8,776室のうち、エアコン(冷房)が設置されているのは19万3,003室で、設置率は49.6%でした。他の学校の普通教室の設置率を見ると、幼稚園が59.9%、高校が74.1%、特別支援学校が81.0%となっています。

小中学校普通教室のエアコンの設置率は、1998(平成10)年度にはわずか3.7%でした。約20年前の当時は、小中学校にエアコンを設置することは、騒音対策で窓が開けられないなど、特別な事情がない限りあり得ませんでした。

2010(平成22)年度でも設置率は16.0%にとどまっていましたが、それ以降急速に上昇して、14(同26)年度は32.8%となり、17(同29)年度には約半数となったわけです。過去7年間で設置率は33.6ポイントも上昇したことになります。

学校にエアコンを設置することについて、以前は「冷房などぜいたくだ」「子どもには我慢することを教えることが大切だ」などという意見が必ず出され、子どもの健康を心配する人々との間で、よく論争になったものでした。ところが地球温暖化のせいか、最近は35度以上の「猛暑日」が何日も続くようになり、このような精神論を支持する声も少なくなったようです。

地域格差など新たな課題も

一方で、新しい課題も出てきました。たとえば小中学校普通教室の設置率は、トップが東京都の99.9%。次いで香川県97.7%、福井県86.5%、群馬県85.7%、京都府84.0%、滋賀県82.8%などの順です。逆に設置率が低いのは北海道の0.3%、岩手県の1.1%の他、青森・秋田・宮城・長野・静岡・奈良・愛媛・長崎の各県が設置率10%以下となっており、都道府県間の格差が目立ちます。北海道や東北など寒冷な地方では、冷房はあまり必要ではないと思われますが、暑いと思われる地域でも、設置率の低い県があるのが気になるところです。

小中学校を所管する市区町村の多くは、財政事情が悪化しているのに加えて、校舎などの耐震化に予算を割かれ、冷房まで手が回らないところも少なくないことがうかがわれます。

さらにエアコンは、設置費用だけでは終わりません。電気代などのランニングコストが掛かります。電気代の予算がないため、冷房があっても使えない……という笑い話のようなことも、実際に学校で起こっています。
次期学習指導要領では授業時間数などが増えるため、夏休みなどの長期休業期間を短縮して授業をする学校も多くなると思われます。厳しい猛暑の中で、子どもたちが健康的に学習できる環境づくりが、これからの学校には求められることになりそうです。

※公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況の結果について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/06/1386475.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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