「中高一貫教育校」が全国で約600校に

中高一貫教育校が2016(平成28)年度に全国で595校設置されていることが、文部科学省の「高等学校教育の改革に関する推進状況調査」でわかりました。2017(平成29)年度以降にも26校が設置予定となっており、これからも増えることが予想されます。

公立は45都道府県に

中高一貫教育校は、学校教育法の改正によって1999(平成11)年度から創設されました。それまでも私立中高一貫校はありましたが、設置者が同じ中学校と高校で実質的な一貫教育を行っているだけで、制度的裏付けはありませんでした。それを制度化して、教育課程上の特例を設けたのが、中高一貫教育校です。

1999(平成11)年度は全国4校でスタートしましたが、2003(平成15)年度には118校、06(同18)年度には203校、08(同20)年度には337校、10(同22)年度には402校と増加し、16(同28)年度は前回調査(13<平成25>年度)比145校増の595校(国立5、公立198、私立392)と、600校に手が届く寸前まで来ました。公立の中高一貫教育校も45都道府県に設置されており、ないのは富山県と鳥取県のみとなっています。

中高一貫教育校には、6年一貫の学校である「中等教育学校」、県立中学校と県立高校など設置者が同じ中高を組み合わせた「併設型」、市町村立中学校と県立高校など設置者が異なる中学校と高校を連携させた「連携型」の3タイプがあります。2016(平成28)年度の内訳は、「中等教育学校」が52校(国立4、公立31、私立17)、「併設型」が461校(国立1、公立87、私立373)、「連携型」が82校(公立80、私立2)となっています。

エリート教育批判も治まり併設型が人気に

もともと中高一貫教育校は、私立の中高一貫教育を公立学校でも実施できるようにするためのもので、生徒や保護者の選択幅の拡大が狙いでした。また創設当初は「エリート教育批判」の雰囲気が根強く、公立中高一貫教育校は、環境教育などの特色ある教育をする学校が中心であったため、公立はあまり増えませんでした。

ところが、その後「ゆとり教育」批判など学力重視の風潮が高まるなかで、公立学校でのエリート教育に対する社会の反応も変化してきました。そして東京都が「未来を切り開くリーダーの育成」を掲げ、初めて連携型以外の都立中高一貫教育校を設置した2005(平成17)年度ごろから、公立でもエリート教育や進学重視という性格が強まると同時に、設置する都道府県も増えてきました。また複数の一貫教育校を設置する自治体が増えてきたのも特徴で、東京都では既に17校もの都立中高一貫教育校が設置されています。

中高一貫教育校の中でも人気があるのは「併設型」(中高1組で1校と計算)で、2016(平成28)年度は公立が87校(前年度74校)、私立が373校(同243校)となっており、生徒や保護者の人気が高いことがうかがえます。2017(平成29)年度以降の設置予定を見ると、公立12校のうち6校、私立14校のうち13校が「併設型」を予定しています。

中高一貫教育校は、学力向上だけでなく、次期学習指導要領で重視されている思考力・判断力・表現力の育成や、アクティブ・ラーニングの実施などの面でもメリットがあると言われており、これからも数が増えることになりそうです。

※高等学校教育の改革に関する推進状況(平成28年度版)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/detail/1384268.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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