中学校にも必要な学校給食

学校給食については、さまざまな思い出がある人が少なくないと思います。ところが当然のように思える学校給食も、地域により事情が異なるということをご存じでしょうか。文部科学省がまとめた2015(平成27)年度「学校給食実施状況等調査」の結果で、ほぼすべての公立小学校が完全給食を実施している一方、公立中学校は88.8%にとどまっていることがわかりました。

大きい実施率の地域格差

2015(平成27)年5月1日現在、国公私立学校の完全給食実施率は、小学校が98.5%(国立97.2%、公立99.1%、私立39.0%)で、国公立の小学校は、ほぼ全校が学校給食を実施しています。私立を除く小学校では、子どもたちのほとんどが給食の恩恵を受けていると言ってよいでしょう。

これに対して、中学校の完全給食実施率は82.6%(国立22.1%、公立88.8%、私立9.9%)と、小学校に比べて低くなっています。一般的には保護者の間でも、小中学校まで給食があり、高校からお弁当だった……という人が多いと思います。ところが公立中学校の場合、実は地域により事情が異なり、給食がなかったという人も少なくないのです。

その理由は、都道府県により完全給食を実施している公立中学校の割合が大きく異なるからです。たとえば千葉県や香川県は実施率が100%で、岐阜県や東京都、愛知県など多くの都県が実施率98%以上となっているのに対して、高知県は61.7%、兵庫県は65.1%、滋賀県は65.7%、大阪府は69.0%など、西日本を中心に中学校の実施率が8割を切っている府県が少なくありません。

神奈川県は実施率25.7%で全国でも最低となっており、実施率の低さが際立っています。これは、横浜市や川崎市など大都市部で公立中学校の給食を実施していないことが主な原因のようです。

「手作り弁当」では解決できない時代に

国公私立を通じた中学校の完全給食実施率は、2013(平成25)年度が80.1%、14(同26)年度が81.4%、15(同27)年度が82.6%と、徐々にアップしています。公立に限っても、2014(平成26)年度の87.5%から、15(同27)年度は88.8%に、わずかながらも上昇しています。しかし小学校に比べると、依然として問題が多いといえます。

公立中学校の給食実施率が低い府県では、ベビーブームなど中学校の急増期に給食施設を作る余裕がない市町村が多かった、教育委員会と学校の関係に課題があったなど、さまざまな事情があります。そして、新たに中学校で給食を始めようとすると多額の予算が必要になるので、未実施のままというのが実情のようです。

また給食を実施していない市町村の一部には、「手作り弁当には保護者の愛がある」「弁当は家庭の食育につながる」など、給食実施に消極的な意見もあります。しかし家庭の複雑化や働く母親の増加など、保護者の弁当に頼ることもできなくなりつつあります。特に母親にとって毎朝の弁当作りの負担は、決して軽くはありません。

待機児童問題ほど注目されていませんが、保護者の負担軽減のためにも中学校の給食実施率をもっと上げていく必要があるのではないでしょうか。

※学校給食実施状況等調査
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001016540

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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