私大の初年度納付金は減ったけれど…授業料で負担増

文部科学省がまとめた2014(平成26)年度の私立大学入学者に係る初年度学生納付金調査の結果によると、私立大学の入学金などを含む初年度納付金は、前年度より0.1%減の平均131万1,644円で2年連続して減少しました。初年度納付金全体では減っているものの、授業料自体は3年連続でアップしており、大学生活全体の教育費負担は増加傾向を示しています。

入学金値下げの一方で

2014(平成26)年度の私立大学の初年度納付金の内訳を見ると、授業料が平均86万4,384円(前年度比0.5%増)、入学金が平均26万1,089円(同1.3%減)、施設設備費が平均18万6,171円(同0.9%減)で、合計すると平均131万1,644円(同0.1%減)となり、全体では2年連続で減少しています。保護者の教育費負担が重くなるなかで、入学者確保のため、多くの私立大学が初年度納付金を抑制しようとしていることがうかがえます。

初年度納付金が安くなることは保護者として歓迎すべきことですが、実際にはそう喜んでばかりもいられないようです。というのも初年度納付金の減少は、入学金の値下げが大きな原因で、授業料は逆に値上がりしているからです。

初年度納付金の最近の推移を見ると、入学金は2011(平成23)年度に26万9,481円だったものが、14(同26)年度は26万1,089円となり、3年連続して減少しています。また施設設備費も2012(平成24)年度の18万8,907円から14(同26)年度は18万6,171円となり、これも2年連続の減少となっています。

その一方で授業料は、2011(平成23)年度は85万7,763円だったものが、14(同26)年度は86万4,384円となり、逆に3年連続して値上がりしています。つまり、入学金などの一時的経費を値下げして初年度納付金の伸びを抑制する代わりに、卒業まで支払うことになる授業料を値上げしているということです。

初年度納付金を安く抑えて入学者を確保しながら、授業料を値上げすることで財政悪化を防ぎたいという私立大学の狙いがあるといえるでしょう。

医歯系は約629万円に

学部ごとに納付金が異なることも、私立大学の大きな特徴です。
初年度納付金の平均額を分野別に見ると、文科系学部が114万6,819円(前年度比0.2%減)、理科系学部が150万1,233円(同0.4%増)、医歯系学部が460万6,887円(同1.2%減)、芸術・体育などその他学部が145万8,548円(同0.2%減)となっています。

このうち理科系学部は、2年連続で初年度納付金がアップしているのが注目されます。就職状況の好転を受けて、大学志願者の間では文科系の人気が回復する一方、理科系の人気が落ちているという事情が背景にありそうです。

この他、調査項目には含まれていませんが、学部によっては高額な実験実習料がかかることがあります。実験実習料なども加えた2014(平成26)年度の初年度納付金額(参考値)は、文科系学部が122万5,855円、理科系学部が164万380円、医歯系学部が628万6,147円、その他学部は161万1,967円へと跳ね上がっています。

進学先の私立大学選びでは、初年度納付金のデータだけでなく、卒業までに払う授業料の総額、在学中の実験実習料の負担など表面的なデータでは出てこない金額まで考慮することも大切なようです。

※私立大学等の平成26年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/1365662.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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