高い授業料、足りない奨学金…日本の大学

文部科学省は、日本・米国・英国・フランス・ドイツ・中国・韓国の教育関係のデータをまとめた2016(平成28)年版「諸外国の教育統計」を公表しました。この中から、大学など高等教育関係のデータを並べてみると、日本の大学の特徴が浮かび上がってきます。諸外国の大学に比べて、日本の大学などは、どのような点が異なっているのでしょうか。なお同統計は、収録データの年度が国により多少異なります。ここでは収録されている最新のデータを取り上げますが、比較されている各国のデータが同一年度のものとは限りません。

私立大学生の割合は7か国中でトップ級

まず、諸外国と比べて目につくのは、日本は私立大学の学生が多いことです。大学・大学院の学生全体に占める私立学生の割合は、日本が73.6%、米国が40.0%、英国が0.1%未満、学位授与権が私立大学にはないためフランスはゼロ、ドイツは1.2%、中国は24.2%、韓国は75.5%となっています。欧米や中国では大学・大学院教育の多くを国公立が担っているのに対して、日本と韓国は大学・大学院の学生の7割以上を私立が受け持っています。

日本の大学は国公私立合わせて約780校あり、大学が多すぎるとの批判が、よくあります。しかし人口1,000人当たりの高等教育在学者数(大学・大学院など)を見ると、日本は23.3人なのに対して、米国は40.6人(フルタイム学生のみ)、英国は27.3人(同)、フランスは36.9人、ドイツは32.4人、中国は19.5人、韓国は65.0人となっており、日本よりも少ないのは中国だけです。さらに聴講生などパートタイム学生を含めると、米国は65.7人、英国も38.6人にも上ります。国際的に見ても、決して日本の大学生は多すぎるということはないようです。

給付型奨学金がないのは日本だけ

大学の学生納付金(入学金や授業料など)が高いことも、日本の特徴です。学生納付金の平均額(年額)は、日本は国立大学が81万7,800円、私立大学が131万1,644円、米国は州立が63万4,000円、私立が192万7,000円、英国は157万1,000円(国立大最高額)、フランスとドイツは授業料が無料のため健康保険などの費用のみ徴収、韓国は国公立が41万9,900円、私立が79万9,300円となっています。このうち、入学金を徴収しているのは、日本と韓国だけです。米国は、ハーバード大学が321万1,000円、スタンフォード大学は328万4,000円となっており、いわゆるエリート大学は学費も高額になっています。

英国や米国などと比べると、日本の学費は極端に高いとは言えません。しかし、各国の奨学金制度(中国はデータなし)を見ると、いずれも返済不要の給付型奨学金があり、ないのは日本だけとなっています。

英国では大学生の58%が給付型奨学金を支給されており、米国でも多くの学生が連邦政府による給付型奨学金を受けています。こうして見ると、日本の大学教育は、保護者など家計により支えられていると言っても過言ではありません。

日本でも、いよいよ2017(平成29)年度から給付型奨学金が創設される見通しですが、支給者は一部にとどまりそうです。さらなる支給対象者の拡大、支給額の増額などが望まれるところです。

※「諸外国の教育統計」平成28(2016)年版
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/syogaikoku/1379305.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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