小学生が喜ぶ!「読み聞かせ」のコツと本の選び方
小学生にとって絵本の読み聞かせは、語彙力や表現力を伸ばすだけでなく、親子関係を良好にするとても効果的なツールです。小学生向けの読み聞かせのコツや本選びについて、子育て絵本アドバイザーの前田ちひろさんにお話を聞きました。
読み聞かせを通して親子関係を良好に
乳幼児期の読み聞かせが重要であることは、広く知られるようになってきましたが、小学生にとっても、読み聞かせはとても大切な時間だと考えています。語彙が増えるのはもちろんのこと、物語を通してさまざまな出来事や感情を「疑似体験」することで、人の心を感じられる力や自分の考えを言葉にする力、物事を見る目がつきます。そのため環境が変わり、様々な出来事が起きた時にも、柔軟に対応していけるようになります。
また、おうちのかたにとっても絵本の読み聞かせは、お子さまと心を通わせる大切な時間になるはずです。特に小学生になると、おうちのかたの手を離れ、目が届きにくくなることも多くなります。また子どもも幼児期の頃のようには話さなくなるため、子どもの気持ちをつかみにくくなるものです。日頃から読み聞かせを行い、ご家庭でコミュニケーションの時間を大切にしておくと、おうちのかたは子どもの不安や緊張といった些細な気持ちの変化を読み取ることができますし、おうちのかたが自分の気持ちにいつも寄り添ってくれるという安心感で、お子さまもきっと「困ったときはおうちの人に相談しよう」と頼ってくれるはずです。
本選びのキーワードは、「知的好奇心」と「情的なストーリー」
私が小学4年生の娘や小学校で読み聞かせを行うときに本選びで意識していることは、この時期の子どもにとって、「知的好奇心をくすぐる内容であること」、「情的な内容であること」という2つの軸です。情的な内容というのは、勇気、ユーモア、思いやり、人を愛する心など、物語を通して主人公の感情を「疑似体験」できるようなものです。日頃から子どもたちがどのようなことに興味・関心をもっているか意識を向けると、お子さまにフィットした本をセレクトしやすいです。学年別に数冊ずつ、おすすめの本をご紹介します。
低学年
〈知的〉『タテゴトアザラシのおやこ』(作/結城モイラ、写真/福田幸広、出版社/ポプラ社、価格/1,000円+税)
〈情的〉『しげちゃん』(作/室井滋、絵/長谷川義史、出版社/金の星社、価格/1,300円+税)
中学年
〈情的〉『ええところ』(作/くすのきしげのり、絵/ふるしょうようこ、出版社/学研プラス、価格/1,300円+税)
〈知的〉『しょうたとなっとう』(作・絵/星川ひろ子・星川治雄、出版社/ポプラ社、価格/1,200円+税)
高学年
〈知的〉『ランドセルは海を越えて』(写真・文/内堀 タケシ、出版社/ポプラ社、価格/1,400円+税)
〈情的〉『かえるの平家ものがたり』(作/日野十成、絵/斎藤隆夫、出版社/福音館書店、価格/1,500円+税)
また、小学生に読み聞かせをする際、本のなかで「疑似体験」したことを、「現実体験」へリンクさせてあげると、お子さまの興味・関心がより深まります。例えば、読み聞かせをしていて、恐竜やその時代に興味をもったら、お子さまと一緒に博物館へ行ってみるのです。そして、博物館で疑問に思ったことがあれば、本で調べるように促しましょう。お子さまが「疑似体験」と「現実体験」を行ったり来たりすることで、お子さまは興味・関心が広がり、そして深めることができます。
本が読みたくなるような環境を整えて
「うちの子は本には興味がなくて…」という場合もあるでしょう。だからといって「読み聞かせはもう卒業」と今までの本を片付けてしまうのは、もったいないですね。本への興味・関心がいつ高まるかわからないからです。お子さまの「本が読みたい」というスイッチがいつ入ってもいいように、さまざまな種類の本を自宅に置いておくことをおすすめします。できれば、いつも過ごしている部屋で、いつでも読めるようにしておきたいですね。今は興味がなくても、いつかスイッチが入り、むさぼるように読むときがくるはずです。それまでは、無理に読ませようと思わなくても良いと思います。「本を読みなさい」というオーラがおうちのかたから漂っていると、子どもがそれを敏感に感じ、本を読むことを心から楽しめなくなるからです。
前田さんの自宅。リビングに1200冊以上の絵本が並んでいる。
まずは、読み手である私たち大人も、本の世界を楽しんでいただきたいですね。中学年以上のお子さまは、「自分で読むから読み聞かせはもういいよ!」と言うかもしれません。一人で児童書を読んでいるなら、それをそっと見守ればよいと思います。あるいは、「お母さんも本が読みたいから、隣に座って読んでいてもいい?」と言ってみましょう。そのうちきっと「それ、何の本なの?」と、身を乗り出して聞いてくるはずです。
お子さまはあっという間に成長してしまいます。ぜひ読み聞かせを通して、ご家庭でのコミュニケーションの時間を、より豊かなものにしていただきたいですね。