第2回:授業が変わる!改訂間近の次期「学習指導要領」3大トピック

もうすぐ学習指導要領が改訂されるのをご存じですか?
学習指導要領とは、国が「子どもたちが学校で何を学ぶのか」を定めたもの。教科書もこれをもとに作られます。だいたい10年に1回のペースで改訂され、小学校は2020年、中学校は2021年、高校は2022年から新しい内容で実施される予定です。
今度の改訂は、これまで以上に変化が大きいと言われています。では、どのように変わるのか。3つのトピックを、ベネッセ教育総合研究所の黒木研史がご紹介します。

●トピック1:「何ができるようになるか」

今までは、どの学年・どの教科で何を教えるか、を中心に定められてきた学習指導要領ですが、未来に生きる子どもたちにどのような力(資質・能力)を身につけさせるのか、つまり「何ができるようになるか」というところまで踏み込んでいるのが改訂の大きなポイント。これは言わば「新しい学力観」とも言えるものです。これまでは、学力というと「学んだことをちゃんと理解しているか」(知識・技能)の評価が大きなウェイトを占めていましたが、これからは下の図のようになりそうです。

つまり、知識や技能を習得するだけではなく、それをもとに自分で考えたり、表現したり、判断したりして、実際の社会で役立てることが求められるということ。学んだことをどのように使い、それによってどのように社会と関わりながら豊かな人生を送るかというところまで、新しい時代に必要な力だと考えられています。これは、数値化するのが難しいので、どう評価していくのか気になりますね。

●トピック2:「どのように学ぶか」

もう一つの大きなポイントは、上記の3つの学力を身につけるために、どのように学ぶか、ということにも言及している点です。学習指導要領改訂の検討資料をみると、「主体的・対話的で深い学び」というキーワードが出てきます。もう少し詳しく見てみましょう。

【主体的な学び】
学ぶことに興味や関心をもち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる

【対話的な学び】
子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める

【深い学び】
各教科等で習得した概念や考え方を活用した「見方・考え方」を働かせ、問いを見いだして解決したり、自己の考えを形成し表したり、思いを基に構想、創造したりする

※文部科学省Webページより

まとめると、「自ら学び続ける姿勢を持ちつつ、ほかの人の考えも取り入れながら自分の考えを深め、その知識や考え方をもとに問題を解決したり、新しい価値を創造したりする学び」ということになるでしょうか。

この「主体的・対話的で深い学び」を行うためのひとつの手段が、いわゆるアクティブ・ラーニングと言われるもの。具体的には、グループワークや討論など話し合いを取り入れた授業です。学んだこと・考えたことを、友だちと意見を交換しながら、より深く理解したり、自分の考えを見直したり。そんな授業が今後さらに増えていくでしょう。

●トピック3:教科や科目の新設。そして、改めて注目される「基礎・基本」

次の学習指導要領では、小学校高学年で「英語」が正式に教科となり、高校では「公共」「地理総合」「歴史総合」(いずれも仮称)などの科目が新設される予定です。中学校では教科の枠組みについては大きな変化はないようですが、先に述べたように授業の進め方は変わっていくと思います。

話し合いを取り入れた授業が増えたり、先々の大学入試でも面接や小論文が重視されたりという話を聞くと、「知識は重要じゃないのか」と誤解されるかもしれません。しかし、文部科学省は学習指導要領を改訂しても「学習内容の削減は行わない」とも明言していますので、これまで同様、知識や技能の基礎・基本の定着もとても大事です。

例えば、高校で新しい科目になる予定の「歴史総合」は、近現代史を中心に「日本史」「世界史」の両面から「今の世界はなぜこういう状況になっているのか」という背景を理解したうえで、これからの日本・世界のあり方を考える授業になると予想されます。このような授業では、日本史・世界史それぞれの内容をしっかり理解していないと対応できません。また、授業の中の話し合いでも、相手の発言を理解したり、自分の意見を伝えたりするなかで知識や技能は必要です。

先に述べた新しい3つの学力を身につけるためにも、知識や技能の基礎・基本の定着は欠かせません。これらがあってこそ「使う力」や「社会に活かす力」につながります。知識を活かす場面で「まだまだ知識が足りない」と感じたら、必要な知識を身につけるために学び直す、というサイクルにもつながっていくでしょう。そういったことを考えると、今までもこれからも、変わらず大切なのは、身につけるべき知識、その基礎・基本をきちんと習得する、という姿勢ではないでしょうか。
(取材日:2016年12月1日)

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プロフィール


黒木 研史 (くろき・けんし) 情報企画室長

教育関連の出版社において書店営業や商品企画、またインターネットサービスプロバイダにおいて教育関連コンテンツの配信業務などに従事し、2004年に(株)ベネッセコーポレーションに入社。教育におけるICT活用の効果について外部機関との共同研究や、WEB教材用の動画コンテンツの制作支援などを経て現職。現在は、教育行政動向等をはじめとする教育環境変化についての情報収集・分析、予測等を行う。

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