子どもの芸術体験、充実を…でも大人に課題?

子どもの成長の面では、学力を身に付けることなどと同様に、芸術や文化に関する活動をしたり、優れた芸術や文化に触れる機会を持ったりすることが大切です。内閣府の「文化に関する世論調査」で、国民の約6割が、学校での公演活動などによる鑑賞体験が大切であると考えていることがわかりました。一方、過去1年間で芸術や文化などを直接鑑賞したことのない大人は約4割で、前回調査よりも増加しています。どうやら芸術・文化活動については、大人のほうにも大きな課題がありそうです。

学校公演など鑑賞体験の充実を

調査は2016(平成28)年9~10月、全国の18歳以上の男女3,000人を対象に面接方式で実施し、うち1,831人(61.0%)から回答を得ました。

まず、子どもの文化芸術体験について重要なことは何か(複数回答)を聞いたところ、最も多かったのは「学校における公演などの鑑賞体験を充実させる」で60.9%、次いで「地域の文化施設における、子ども向けの鑑賞機会や学習機会を充実させる」が42.4%、「地域の祭りなど、地域に密着した伝統的な文化体験の機会をより多く提供する」が41.5%、「学校における演劇などの創作体験を充実させる」が39.8%、「歴史的な建物や遺跡などについて学習する機会を充実させる」が34.3%などとなっています。文化庁は、演劇や音楽などさまざまな文化・芸術団体を学校に派遣する活動をしていますが、大人も含めて、学校での鑑賞体験などが支持されていることがうかがえます。

子どもの文化芸術体験に期待する効果(複数回答)としては、「日本の文化を知り、国や地域に対する愛着を持つようになる」が59.2%でトップ。次に「美しさなどへの感性が育まれる」が43.0%、「他国の人々や文化への関心が高まる」が39.4%、「コミュニケーション能力が高まる」が38.9%、「他者の気持ちを理解したり思いやったりするようになる」が37.1%などでした。国や地域への愛着に期待する声が、意外と高いようです。

約4割が文化芸術を鑑賞せず

大人たちの文化芸術に関する活動は、どうなっているのでしょうか。最近1年間で文化芸術を直接鑑賞したことがあるという者の割合は59.2%で、前回の2009(平成21)年調査よりも3.6ポイント減っていました。約4割の人々が、1年間で一度も文化芸術を直接鑑賞する機会がなかったことになります。

鑑賞した内容(複数回答)は、「映画(アニメを除く)」が31.1%、「音楽」が24.8%、「美術」が22.5%、「歴史的な建物や遺跡」が18.4%などとなっています。

文化芸術に関する活動を直接鑑賞する機会がなかった人々に、その理由(複数回答)を尋ねたところ、「時間がなかなかとれないから」が46.1%と最も多かったものの、「関心がないから」という者も28.0%いました。また「近くで公演や展覧会などをやっていないから」が11.4%ありましたが、「テレビ、ラジオ、CD・DVD、インターネットなどにより鑑賞できるから」という者も10.5%いました。文化芸術自体に関心がない者、ネットなどでの間接体験で済ませる者なども少なくないようです。

文化芸術に対する子どもたちの関心を高めるためにも、もう少し大人たち自身が文化芸術に触れる機会を増やす必要がありそうです。

※文化に関する世論調査
http://survey.gov-online.go.jp/h28/h28-bunka/index.html

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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