子ども時代の体験活動は結婚観や子育て観にも影響

小さなころにさまざまな体験活動をした者ほど、大人になってから「結婚したい」「子どもが欲しい」と思う割合が高くなることが、独立行政法人国立青少年教育振興機構の調査でわかりました。同機構の別の調査で、幼少期などの体験活動の多寡は、大人になってからの行動や意識にも影響を及ぼすことがわかっていますが、結婚や子育ても無縁ではないようです。

「結婚したくない」「子どもはいらない」増加

調査は2015(平成27)年12月、20~30代の男女を対象に、インターネットを通じて実施し、4,000人(未婚2,394人、既婚1,606人)から回答を得たうえで、同様の項目を調べた08(同20)年度調査と比較しました。

まず未婚者に「結婚」について聞いたところ、男性は「結婚したい」(「早く結婚したい」と「いい人が見つかれば結婚したい」の合計、以下同じ)は、2008(平成20)年度の59.5%から39.5%に減少。代わりに「結婚したくない」は11.9%から21.6%に増加しています。一方、女性も「結婚したい」が64.4%から58.8%にやや減少し、逆に「結婚したくない」は7.9%から12.9%に増えています。

また、「子供は欲しくない」という者は、男性は2008(平成20)年度の10.9%から22.7%へと倍増。女性も11.3%から21.0%に増えています。結婚しなくてもよい、子どもも欲しくないという男女が確実に増えているようです。

ところが結婚と、小学生の時までの体験活動との関係を見たところ、結婚経験がある者の割合は、小学生の時までの体験活動が「多い」グループでは49.5%に上る一方、体験活動が「少ない」グループでは33.4%しかいませんでした。

さらに体験別に見ると、▽「自然体験」の多いグループでは48.0%、少ないグループでは36.5%▽集団での遊びなど「友だちとの遊び」の多いグループでは52.4%、少ないグループでは30.0%▽地域清掃など「地域活動」の多いグループでは48.8%、少ないグループでは36.0%……などで、いずれの活動も経験が多いグループほど、結婚している割合が高くなっています。

コミュニケーション能力に関係

未婚者だけを見ても、「結婚したい」という者の割合は、小学生の時までの体験活動が多いグループは83.3%、少ないグループは63.8%で、体験活動の経験が多い者ほど、割合が高くなっています。特に「友だちとの遊び」「家族行事」「地域活動」で、比較的大きな差が見られました。子どものころの体験活動が、大人になってからのコミュニケーション能力などに関係していることがうかがえそうです。

未婚・既婚を含めて、子どもがいない者に限って見ると、「子供は欲しい」という者の割合は、体験活動が多いグループでは75.6%だったのに対して、体験活動が少ないグループでは57.1%にすぎませんでした。

これらのことから、「友だちとの遊び」「家族行事」「地域活動」など子どものころの体験活動と、結婚や子育ての意識は大いに関係しているといえそうです。
ただし、未婚者が結婚しない理由を見ると、「経済的に難しい」という答えが最も多く、年収が低くなるほど結婚などに否定的な割合が高くなっています。これら現在の若者を取り巻く事情も見落としてはならないでしょう。

※若者の結婚観・子育て観等に関する調査
http://www.niye.go.jp/kanri/upload/editor/111/File/gaiyou.pdf

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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