国立大のAO増は「高大接続改革」の兆し

文部科学省がまとめた2017(平成29)年度「国公立大学入学者選抜の概要」によると、AO入試を採用する国公立大学の数は、AO入試が79校、推薦入試が160校で、AO入試の実施率は過去最高となりました。重要なのは、実施大学が増えたことだけでなく、これらの動向が、文部科学省の進めている「高大接続改革」全体に関わっていることです。

実施学部が4割超える

調査(7月現在)によると、AO入試の実施を予定しているのは、国立大が前年度より3大学増・21学部増の53大学(64.6%)・177学部(44.6%)、公立大学は同1大学増・2学部増の26大学(30.2%)・36学部(19.8%)で、合計79大学(47.0%)・213学部(36.8%)で過去最高となりました。特に、国立大学のAO入試実施学部は、初めて全体の4割を超えました。

一方、推薦入試は、国立大学が同1大学減・1学部減の76大学(92.7%)・278学部(70.0%)と減ったものの、公立大学が同2大学増・3学部増の84大学(97.7%)・172学部(94.5%)と増加して過去最高となり、合計すると160大学(95.2%)・450学部(77.7%)でした。

過去最高を記録したといっても、この数字だけを見ると、AO入試などを行う国公立大学がわずかに増えただけともいえます。しかし、文科省が現在進めている高大接続改革や大学入試改革の動きと重ねて見ると、別の面が見えてきます。大学入試センター試験に替わる新テストの2020(平成32)年度導入に先んじて、高大接続改革の一環である個別大学入試の改革が国公立大学、特に国立大学で始まっているということです。

実際、AO入試について2017(平成29)年度入試予定とその2年前の15(同27)年度入試を比較すると、国立大学での実施大学の割合は57.3%→64.6%、実施学部の割合は36.1%→44.6%、募集定員は2,822人→3,628人へと、大きく増えていることがわかります。

また、2016(平成28)年度入試から、東京大学が推薦入試、京都大学が「特色入試」を初めて導入し、さらに改善を図ろうとしているほか、17(同29)年度入試からは大阪大学が「世界適塾入試」の導入を予定しているなど、有力大学の動きも見逃せません。

センター試験を課すAO入試が増加

国立大学でのAO入試のポイントは、センター試験の受験を、AO入試でも義務付けるところが増えている点です。
AO入試でセンター試験の受験を課した国立大学は、2016(平成28)年度入試で27校・76学部でしたが、17(同29)年度入試では30大学・89学部が課すことにしています。これは、面接や特色ある選抜方法などで、論理的思考力・判断力・表現力や学習意欲・適性を見るとともに、センター試験を活用して基礎学力があるかどうかも判定しようということの表れと見られます。

1点刻みで争う入試から、受験者を多面的・総合的に評価する入試へ……という高大接続改革の理念に対応して、国立大学協会は、募集定員の約3割を推薦入試やAO入試などに充てるという目標を掲げています。目標達成はそう簡単ではなさそうですが、今後も後期入試の募集定員を削るなどの形で、国立大学ではAO入試などが拡大することは確実でしょう。大学入試改革は、既に始まっているともいえるのです。

※平成29年度国公立大学入学者選抜について
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senbatsu/1377882.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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