子どものネットトラブル、4割以上が誰にも相談せず

東京都教育委員会が発表した2015(平成27)年度「児童・生徒のインターネット利用状況調査」の結果によると、小学校から高校までの子どもたちのうち7.1%がインターネット上のトラブルなどで嫌な思いを経験していました。さらに嫌な思いを経験した子どもの4割以上が、誰にも相談せずに「がまんした」と回答しています。トラブルは、保護者の知らないところで起こっているようです。

全体の7.1%が経験

調査は2016(平成28)年2月、都内の公立の小学校から高校、特別支援学校の合計187校を対象に実施し、学校155校、児童生徒2万2,792人、保護者1万9,535人から回答を得ました。

スマートフォン(スマホ)や携帯電話(ケータイ)、ゲーム機などでインターネットを利用している子どもの割合は、小学生が82.4%、中学生が97.1%、高校生が99.1%などとなっています。このうち、2015(平成27)年4月1日から12月31日までの間に、インターネットに絡んでトラブルや嫌な経験をしたことがある子どもは 小学生5.6%、中学生8.6%、高校生10.5%などで、全体では7.1%となっており、学校段階が上がるに従いトラブルに遭う子どもが増えています。

これに対して、子どもからトラブルなどの相談を受けたことがある保護者は、小学校1.2%、中学校4.7%、高校2.8%などでした。トラブルに遭遇しても、保護者に相談しない子どもがいることがうかがえます。

実際、トラブルに遭った子どもに、どう対応したか聞いたところ(複数回答)、最も多かったのは「がまんした」で43.8%、次いで「家族に相談した」が26.9%、謝罪して和解したなど「その他」が25.1%、「学校・先生に相談した」が7.4%、「警察に相談した」が1.7%などでした。

回答ごとに学校段階による大きな違いはありませんでしたが、「家族に相談した」だけは、小学生が30.4%、中学生が28.2%、高校生が17.6%と、学校段階が上がるにつれて割合が下がっています。また、トラブルのうち「無料通話アプリなどのグループで仲間外れにされたり、勝手に退会させられたりした」ことは、他のトラブルに比べて、保護者に相談しない割合が高いようです。

ルールについて保護者と子どもの間に認識の差も

この他、保護者と子どもの間の意思疎通などに溝があることが、気になるところです。たとえば、インターネット利用について家庭などでルールを決めている者の割合を見ると、小学校では子ども73.1%・保護者74.4%、中学校は子ども55.2%・保護者67.1%、高校では子ども28.9%・保護者45.9%となっています。保護者がルールを決めていると考えているのに対して、必ずしも子どもたちはルールがあるとは受け止めていないことがうかがえます。ルール決定の際の話し合いの有無でも、子どもと保護者の間には認識の違いが見られました。

一方、インターネット利用に関するルールやマナーについて教えてもらったのは(複数回答)、「家族から」が53.7%、「学校で」が41.4%、「自分で調べた」が22.5%などで、家庭の重要性がわかります。ネット上のトラブル防止で大切なことは、単にルールを決めるだけでなく、その内容を家庭で十分に話し合うことでしょう。

※平成 27 年度 児童・生徒のインターネット利用状況調査報告書 (概要版)
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/pickup/seisaku/seisaku_net/27houkokugaiyou.pdf

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

子育て・教育Q&A