専門学校に改めて脚光!? 職業教育に大きな可能性

文部科学省の検討会議が、これからの専修学校教育の振興に関する審議経過報告をまとめました。専修学校専門課程(専門学校)を、実践的な職業教育機関として高く評価するとともに、専門学校全体の質の向上の他、「社会人の学び直し」の教育機関として重視することなどを求めているのがポイントです。

社会人の学び直しなどを柱に

現在、過年度卒業者を含めると、高校卒業者の22.1%が専門学校に進学しています。一方、文科省は、新たな高等教育機関として「専門職業大学」や「専門職業短期大学」(いずれも仮称)の創設を検討しており、これらの教育機関が具体化すると、専門学校志願者にも大きな影響が及ぶことになります。このため文科省は、今後の専門学校などの在り方を探ることにしたものです。

検討会議では、専門学校について資格取得や専門分野の知識・技能の習得だけでなく、「専門分野の知識・技術を実際に活かせる力」を身に付けることができていると評価しています。ベネッセ教育総合研究所の調査結果でも、専門学校卒業者の約7割が、他人と協力しながら物事を進める力など、いわゆる「非認知スキル」が身に付いたと回答しています。また、教育課程や設置基準などの規制が緩いため、機動的な教育活動を展開することで、社会や企業のニーズに素早く応えることができるのも、専門学校の特徴です。

検討会議では、産学連携など、企業と専門学校が連携を強化すると同時に、地方創生の観点から、地域人材の育成も専門学校の役割であると強調。さらに、企業と連携しながら、社会人の学び直しのための機関としての役割を果たすことを求めています。

「専門職業大学」などの創設が検討されているなかで、社会人の学び直しや企業の社員のキャリアアップなどの場としての役割が大きな柱の一つとして提言されたことは、今後の専門学校の在り方などを考えるうえで、注目を集めることになりそうです。

専門学校の質の向上などが課題に

ただ、ベネッセ教育総研の調査では、大卒と専門学校卒の間には、年収で100万円の開きがあるという結果も出ています。これは、専門学校間の質のばらつきが大きく、玉石混交であるという状況も影響しています。

これに対して検討会議は、企業と連携して、より専門的・実践的な実習などを行う「職業実践専門課程」を拡充することで、専門学校の質を向上させていくという方針を打ち出しました。職業実践専門課程は、文科省が審査して認定する仕組みで、現在、専門学校の約3割が認定されています。また検討会議は、職業実践専門課程の認定校を拡大するため、修業年限2年以上という現行規制を緩和して、1年以上の課程も認定対象にすることを検討するとしています。

この他、専門学校の振興には、運営費補助金など、財政的支援も必要となります。しかし、これについて検討会議は、施設・設備などへの支援を進めていくというにとどめる一方、経済的に困難な専門学校生への支援などの枠組みをつくる必要があるとしています。
いずれにしろ、専門職業大学などの創設に伴って、今後、専門学校の在り方も大きく変わってくることが予想されます。

※これからの専修学校教育の振興のあり方検討会議審議経過報告
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/034/gaiyou/1376898.htm

※ベネッセ教育総研「専門学校での学びと社会への移行に関するふりかえり調査」
http://berd.benesse.jp/koutou/research/detail1.php?id=4935

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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