私大の約4割で定員割れ 深刻化する地方・中小私大

日本私立学校振興・共済事業団は、2016(平成28)年度「私立大学・短期大学等入学志願動向」の調査結果をまとめました。それによると、入学者が入学定員を下回った、いわゆる「定員割れ大学」が私大全体の44.5%に上りました。大規模大学や大都市部などの大学に入学者が集中する一方で、小規模大学や地方の大学には学生が集まらないという実態も、改めて浮き彫りになっています。

全体では入学定員以上の学生を集める

調査は、全国の私立大学586校(株式会社立を除く)のうち、学生募集停止校などを除く577校のデータを集計しました。2016(平成28)年度の私立大学全体の入学定員46万7,525人(前年度比0.8%増)に対して、志願者は延べ362万9,277人(同3.3%増)で、志願倍率は7.76倍(同0.18ポイント増)でした。また、受験者は延べ348万9,798人(同3.4%増)、合格者は延べ124万5,863人(同0.4%増)で、合格率は35.70%(同1.06ポイント減)、最終的な入学者数は48万8,209人(同0.2%増)で、全体の入学定員充足率は104.42%(同0.62ポイント減)となっています。

その一方で、入学者数が入学定員を下回った大学が257校に上っており、全体の44.5%(前年度比1.3ポイント増)が「入学定員割れ」となった計算です。定員割れの割合は、2008(平成20)年度に47.1%と最悪を記録して以降、改善と悪化を繰り返しながらほぼ4割台で推移しています。しかし、これまで横ばいだった18歳人口が、2018(平成30)年度から再び急減期に入るという、いわゆる「2018年問題」を控えて、私立大学の定員割れ校の割合がどう変化するかが大きな課題になっています。

都市部・大規模大学に集中

ところで、私立大学全体では入学定員充足率が104.42%なのに、4割以上の大学が定員割れしているというのは、どういうわけなのでしょうか。

大学規模別に入学定員充足率を見ると、入学定員が「3,000人以上」では109.17%、「1,500人以上3,000人未満」は110.86%などとなっており、800人以上規模のグループはいずれも充足率が100%を超えています。これに対して、「600人以上800人未満」は98.52%、「500人以上600人未満」は95.23%などで、「800人未満」規模のグループは、逆に定員割れという状態です。どうやら入学定員「800人」が、定員割れするかしないかの明暗を分けるラインとなっているようです。

また、地域別に入学定員充足率を見ると、「宮城」101.75%、「東京」109.01%、「愛知」104.86%、「大阪」106.47%、「京都」105.39%などに対して、「北海道」96.98%、「東北(宮城を除く)」88.60%、「甲信越」97.93%、「四国」88.47%などとなっており、都市部に入学者が偏っています。さらに、三大都市圏(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫)の入学定員充足率は106.44%、それ以外の「その他の地域」は97.79%となっており、大都市部と地方の間に大きな差があることがわかります。

「地方創生」の一環として、文部科学省は、2016(平成28)年度から段階的に、入学定員超過率に応じて私学助成の交付基準を厳格化することで、大都市部の大規模大学の入学者数を抑制し、地方の私立大学への入学者を増やそうとしていますが、その効果はまだ見えないようです。

※平成 28年度私立大学・短期大学等入学志願動向
http://www.shigaku.go.jp/files/shigandoukou283.pdf

 (筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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