大学生のインターンシップの実態は? 見直しの動きも

大学・大学院・短大の学生のうち、約8人に1人に当たる12.1%が、民間企業などで就業体験をする「インターンシップ」を経験していることが、独立行政法人日本学生支援機構の調査(2014<平成26>年度)でわかりました。一方、文部科学省などは、企業の採用とは直結しないという現在のインターンシップの在り方を、見直す方向で検討しています。

女子のほうが熱心に参加

調査は2014(平s成26)年11月に、大学・大学院・短大の合計1,014校の学生を対象に実施し、4万2,506人から回答を得ました。インターンシップを経験している学生の割合は、大学が11.4%、短大と大学院が各12.8%でした。
インターンシップの参加回数を見ると、「1回」が8.6%、「2回」が1.8%、「3回以上」が1.8%、「なし」が87.9%で、参加回数1回という学生が多いようです。大学に限って見ると、参加経験者の割合は男子が9.3%、女子が13.7%となっており、男子よりも女子のほうが、熱心にインターンシップに参加しています。

インターンシップに参加して役立ったことは、「視野が広がった」が18.3%、「社会で働くイメージが明確になった」が13.8%、「仕事に取り組む姿勢を学んだ」が12.3%、「厳しさや責任を感じた」と「将来就きたい業種・企業について理解できた」が各11.8%などで、就職に向けた意識面で、よい影響を与えていることがうかがえます。

この他、インターンシップでの交通費や報酬の支給などでは、「支給なし」が男子48.9%に対して、女子は70.8%に上っており、男女格差があることが明らかになりました。

3省合同でインターンシップ見直しを検討へ

インターンシップへの参加者は年々増加傾向にありますが、それでも2014(平成26)年度で約8人に1人にとどまっています。参加者が大幅に増えない理由の一つとして、文科省などが、インターンシップを「キャリア教育」の一環として位置付け、実施企業の採用と直結させないとしていることが挙げられます。

これに対して、インターンシップと採用活動を関連付けることを求める意見もあり、政府は2016(平成28)年5月の規制改革実施計画の中に、インターンシップと採用の関係の見直しを盛り込みました。
これを受けて文科省・経済産業省・厚生労働省は合同で、調査研究協力者会議を設置し、現在、インターンシップの在り方の見直しを検討しています。インターンシップとその実施企業への採用が直結されれば、インターンシップ参加者が増加することは確実でしょう。
ただし、就職活動の早期化や長期化にもつながりかねないため、大学教育に影響を及ぼすことを懸念する声もあります。一方、中小企業を中心に、人材確保のためインターンシップと採用活動をセットにすることを求める意見も強いようです。

今後の大学生などの就職活動の在り方などにも関係してくるため、協力者会議がどんな結論を出すのかが注目されるところです。

※「学生に対するインターンシップ実施状況調査(平成26年度)」全体結果について
http://www.jasso.go.jp/about/information/press/1229358_3557.html

※インターンシップの推進等に関する調査研究協力者会議
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/076/index.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

子育て・教育Q&A