増える外国人留学生、その実態は?
独立行政法人日本学生支援機構の調査で、2015(平成27)年度に日本の教育機関に在籍している外国人留学生の数が、初めて20万人を突破し、過去最高となったことがわかりました。ただし、政府が掲げている、2020(平成32)年度までに外国人留学生を30万人に増やすという「留学生30万人計画」の実現は、現状では相当厳しそうです。
- ※平成27年度外国人留学生在籍状況調査結果
- http://www.jasso.go.jp/about/statistics/intl_student_e/2015/index.html
2015(平成27)年度に日本に在籍する外国人留学生の数は、前年度より2万4,224人(13.2%)増の20万8,379人でした。外国人留学生は、3年連続の増加となります。内訳を見ると、大学・大学院・短大・専門学校など高等教育機関の在籍者が15万2,062人、日本語学校など日本語教育機関の在籍者が5万6,317人となっています。
外国人留学生の出身国・地域別の割合は、中国が45.2%、ベトナムが18.7%、ネパールが7.8%、韓国が7.3%、台湾が3.5%、インドネシアとタイが各1.7%、ミャンマーが1.3%、マレーシアとアメリカ合衆国が各1.2%などでした。日本にいる外国人留学生の92.7%は「アジア」の学生で、次いで「欧州」が3.5%、「北米」が1.3%、「中東」が0.8%、「アフリカ」と「中南米」が各0.7%、「大洋州」が0.3%などとなっており、アジア諸国の学生が9割以上を占めているのが大きな特徴です。
前年度と比較すると、中国と韓国がやや減少しているのに対して、ネパールが55.5%増、ベトナムが47.1%増、ミャンマーが42.4%増と、急激に増えています。これらアジアの新興国の学生が、日本に対して熱い視線を向けていることがうかがえます。
各高等教育機関に在籍する者の割合を、国公私立別に見ると、「大学院」は国立61.7%、公立4.4%、私立33.9%、「大学(学部)」は国立16.3%、公立2.6%、私立81.1%などとなっています。大学院では約6割を国立大学が受け入れている一方、学部では、私立大学が8割以上の外国人留学生を引き受けています。大学院は国立、学部は私立という役割分担ができているようです。しかし、グローバル化に対応するため、特に国立大学は、外国人留学生の比率を増やそうとしており、今後、学部段階の外国人留学生をどれだけ増やせるかが注目されます。
この他、外国人留学生の割合を地域別に見ると、関東が49.9%、近畿が18.1%、九州が12.0%、中部が9.7%、中国が4.7%、東北が2.6%、北海道が1.8%、四国が1.0%で、大都市部などに偏在しており、今後の課題といえそうです。また、高等教育機関での専攻分野は、社会科学36.2%、人文科学24.8%、工学16.2%、芸術3.7%、農学2.2%などで、人文社会系が6割以上を占めています。
政府は、2020(平成32)年度までに「留学生30万人」という目標を掲げていますが、目標達成には厳しさが予想されます。日本への留学は、実際にはアジア諸国が中心であること、専攻分野では人文社会系の学問へのニーズが根強いこと、など現実をもう一度考慮したうえで、外国人留学生のニーズに沿った留学生政策を考える必要がありそうです。
(筆者:斎藤剛史)