幼児期に「非認知能力」を伸ばし始めたほうがよい理由【中編】

 非認知能力は小学校以降の学習のみならず、生涯のあらゆるシーンで重要になることを前編でご説明しました。中編では、非認知能力は教育や支援によって確実に伸ばせること、そして幼児期から育て始めるのが大切である理由について解説します。

非認知能力は、教育や支援によって伸ばすことができる!

 人生のあらゆる場面に深くかかわる非認知能力は、その人らしさの土台を形成する重要な要素といえます。かつては非認知能力に含まれる力や姿勢は、気質や性格と考えられがちでした。例えば、どれだけ我慢できるか、社交的に振る舞えるか、楽観的に考えられるかといったことは、生まれ持ったものと考える人は多いかもしれません。

しかし、現在の研究では、非認知能力は意図的に育てられると考えられています。例えば、子どもが何かにチャレンジしている時、周囲が「がんばればできるよ」「皆が応援しているよ」といった前向きなメッセージを送れば、「もっとがんばろう」という思いが強まるでしょう。そして成功した達成感により、「次もあきらめずにやり遂げたい」という気持ちになるはずです。また、社会性にしても、幼い頃から他の子どもとかかわる機会を多く持たせて、一緒に遊んだり、時にはけんかして仲直りをしたりする経験を積み重ねる中で、人とコミュニケーションをしたり、協力したりする力や姿勢は伸びていくと考えられます。

できるだけ早い時期に伸ばし始めたほうがよい理由とは?

 非認知能力の育成に力を注ぐのは、小学生になってからでも遅いわけではありませんが、できるだけ早期に始めるのがよいと言われています。理由のひとつは、そのほうが非認知能力が効率的に伸びると期待されていることです。

非認知能力は、「雪だるま式」に大きくなっていくという研究成果があります。ある決められた時間までにできるだけ大きな雪だるまを作るためには、できるだけ早い時期に作り始めればよいのは自明です。それと同じように、早い時期から非認知能力を意識しておくと、時間が経過するほど加速度的に高まり、非常に有利に働きやすいと考えられています。

例えば、幼児期にがんばる力やあきらめない姿勢が十分に伸びている子どもは、小学生になって勉強が難しいと感じてもコツコツと根気強く学び続けるでしょう。そして勉強がわかるようになった喜びが自信につながったり、「もっとがんばろう」といった気持ちになったりして、非認知能力はさらに向上していきます。小学生になってから非認知能力を育てようとした場合に比べて、認知能力・非認知能力ともに効率的に伸びるのは明らかでしょう。

非認知能力は夢中になって遊ぶ中で育ちやすい

 次に、非認知能力は「遊び」の中で育ちやすいことが、幼児期に育成することが適している理由です。非認知能力は、誰かに「やらされる」活動ではあまり育ちません。一方、自分から主体的にする活動では、「もっと上手になりたい」「こんな工夫をしてみよう」「あの人に協力してもらうとうまくいきそうだ」といったアイデアが次々に浮かびます。幼児期の遊びは、それこそ主体的な活動です。砂場遊びやごっこ遊びをする子どもがユニークな発想によって遊びをどんどん展開させていく姿に驚いたことがあるかたは多いでしょう。そうした主体的な遊びや活動を通して、非認知能力は効果的に高まっていくのです。

後編では、非認知能力を伸ばすために保護者のかたが心がけたいポイントをまとめます。

※この記事は、ベネッセ教育総合研究所が刊行する『これからの幼児教育』(2015年度春号・夏号)を参考にして作成しています。

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