「スクールソーシャルワーカー」注目のワケ

スクールソーシャルワーカー(SSW)が注目を集めているのを、ご存じでしょうか。現在の子どもたちが抱える問題の中には、経済的貧困や社会格差の拡大、ひとり親家庭の増加など、学校や教員の努力だけでは解決できない事情が背景にあることが少なくありません。そこで登場したのが、教育と福祉の両面で専門的知識を持つ、SSWと呼ばれる存在です。

学校に関わる専門スタッフでは、同じような職種として、臨床心理士などによるスクールカウンセラー(SC)があります。全国的に配置する自治体が広がっており、知っている保護者も多いことでしょう。このSCが、カウンセリングなど心理的手法を駆使した「心の専門家」であるのに対して、社会福祉士や精神保健福祉士などが中心となっているSSWは、ソーシャルワーク(社会福祉)の技法で子どもと同時に家庭や関係機関などにも働きかける「環境調整の専門家」と説明されることもあります。子どもの問題行動などの背景として、社会格差や貧困などの問題が大きな影響を及ぼすようになったことを受けたものです。

全国的には、2008(平成20)年度から始まった文部科学省の「SSW活用事業」で導入され始めましたが、まだ全国的に人数も少なく、SCに比べて知名度が低いのが実情です。SSWは、どんな仕事をしているのでしょうか。文科省がまとめたSSW実践活動事例集から見てみましょう。

  • ※平成26年度スクールソーシャルワーカー実践活動事例集
  • http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1368648.htm

たとえば、ある母子家庭の中学生は、修学旅行積立金の滞納で、間近に迫った修学旅行に参加できない状況にありました。学校から連絡を受けたSSWは、家庭訪問で母親の意向を確認しながら、福祉機関による生活保護の手続き、学校による修学旅行業者との交渉などを進め、中学生は無事に修学旅行に参加できることになりました。登校を渋るようになった小学生のケースでは、養護教諭などによる聞き取りで、家庭内の不和や、経済的な問題が明らかになりました。学校から依頼を受けたSSWが、想定される関係機関を集めてケース会議を開催。経済的な問題と、ネグレクト(育児放棄)に関する家庭への支援を行ったことで、登校状況が安定しました。

いずれも、母子家庭、経済的な問題、ネグレクトを含む児童虐待、発達障害、家庭内暴力など、一筋縄ではいかないケースの中で、SSWが大きな役割を負っていることがうかがえます。同時に、多くの都道府県教育委員会は、財政難によりSSWの増員が困難なこと、適切な人材の確保が難しいことなどを課題として挙げています。

中央教育審議会は、2015(平成27)年末の答申の中で「チーム学校」の考え方を打ち出し、教員と専門スタッフが協働するという学校像を提言しました。その中で、SCなどとともにSSWを、学校の職員として法的に位置付けること、将来的には教員と同様に、SSWを教職員定数の中に組み込んで学校に配置できるようにすることなどが盛り込まれています。

国の財政事情など実現に向けた課題は山積していますが、SSWの必要性は、今後さらに強まってくることは確実でしょう。

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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