実は危険が多い中高生の自転車 「加害者」として高額賠償も

4月からの新学期を控えて、多くの中学校や高校への進学者の家庭では、通学などのために子どもの自転車の購入を考えているのではないでしょうか。しかし、有識者らで組織する「自転車の安全利用促進委員会」の調査結果によると、中高生の自転車には事故の被害者になるだけでなく、「加害者」側になるなど予想以上に多くの危険があることがわかりました。安全な自転車利用のためには、どんなことが必要なのでしょうか。同委員会はこれまで、自転車に関するさまざまな調査を実施しています。それらの中から、中高生に関する項目を見てみましょう。

  • ※自転車の安全利用促進委員会の各種調査
  • http://jitensha-anzen.com/news/

まず年齢別人口1,000人当たりの自転車による事故頻度は、「16~18歳」が5.6%、「13~15歳」が4.1%なのに対して、「65~74歳」は1.4%となっています。自転車による事故が多いと思われているシニア層に比べて、中高生の事故は4~5倍も高いということになります。さらに自転車事故の原因を見ると、中学生の72.0%、高校生の68.9%が、自転車側の法令違反が原因による事故でした。つまり子どもの自転車は、対自動車事故の「被害者」となる一方、対人身事故の「加害者」となる可能性も高いということです。

最近では、自転車で歩行者にけがをさせたりして、高額の賠償を請求されるケースも出ています。また、2015(平成27)年6月に改正道路交通法が施行され、14歳以上に対する自転車の危険運転への罰則が強化されました。しかし、改正道交法により自転車のマナーがよくなったかどうかでは、高校生の54.0%が「良くなっていない」と回答しています。

自転車通学の危険では、高校生は信号無視など「ルール・マナー違反」が50.0%でトップ、次いで狭い道幅など「通学路の危険性」が40.0%だったものの、「運転中の携帯電話使用」(36.0%)、「運転中のヘッドホン使用」(34.0%)、「傘差し運転」(33.0%)、「生徒同士の並進」(29.0%)などを挙げたのは3割台程度にとどまっています。

これは中高生が、信号無視などの交通違反は認識していても、運転中の携帯電話の利用や友達同士の自転車の並走などは、とりたてて悪いことではないと思っているからではないでしょうか。同委員会は自転車の交通ルールを十分に理解していないことが事故の原因の一つと指摘しています。実際、交通安全指導・授業の頻度を中高に尋ねたところ、「1年に1度」が47.3%、「1学期に1度」が18.7%、「半年に1度」が13.0%などで、約半数の学校が年に1回しか交通安全の指導をしていませんでした。

一方、自転車通学で中高が義務化・推奨している項目は、「自転車保険加入」が35.0%、「ヘルメット着用」が27.7%、「ハンドルの形状」が26.3%と比較的高かったものの、メンテナンス点検を受けた自転車であることを示す「TSマーク」は14.0%、部品検査による車体の安全性を示した「BAAマーク」は7.3%にとどまっています。

保護者が考えているほど子どもは交通ルールを知らないというのが実態のようです。子どもが加害者などにならないように、自転車の交通ルールや安全点検の仕方などを保護者も子どもと一緒に考えていくことが大切でしょう。

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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