「私立のみ」公立の3.4倍 広がる教育費格差

文部科学省の2014(平成26)年度「子供の学習費調査」の結果によると、幼稚園から高校までの15年間で学習費総額は、すべて公立学校に通った場合は約523万円、すべて私立学校に通った場合は約1,770万円となり、3.4倍の開きがあることがわかりました。また公立中学校の教育費が過去最高となりましたが、学習塾などの経費の増加が大きな原因となっているようです。

  • ※2014(平成26)年度「子供の学習費調査」
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/1364721.htm

調査は、家庭の学習費負担を調べるため、2004(平成16)年度から2年ごとに実施されています。授業料や学用品などの「学校教育費」、「学校給食費」、学習塾や参考書などの「補助学習費」、おけいこごとなどの「その他の学校外活動費」を合計した2014(平成26)年度の学習費総額は、幼稚園が公立22.2万円・私立49.8万円、小学校が公立32.2万円・私立153.6万円、中学校が公立48.2万円・私立133.9万円、高校が公立41.0万円・私立99.5万円となっており、公立幼稚園以外はすべて12(同24)年度の前回調査よりも増加しています。特に私立小学校と公私立中学校は、過去最高となりました。

これをもとに幼稚園(3歳児)から高校までの15年間の学習費総額を試算すると、(1)すべて公立に通った場合=約523万円、(2)幼稚園のみ私立に通った場合=約609万円、(3)高校のみ私立に通った場合=約698万円、(4)幼稚園と高校で私立に通った場合=約784万円、(5)小学校のみ公立に通った場合=約1,041万円、(6)すべて私立に通った場合=約1,770万円となります。すべて公立の場合とすべて私立の場合の差は1,247万円で、3.38倍の開きがある計算です。私立学校の学習費負担の増加は、授業料などの上昇が主な原因と見られます。

一方、公立中学校の学習費総額が過去最高となった主な要因は、学習塾など「補助学習費」の上昇が大きいようです。公立中学校に通う子どもの補助学習費は前回調査より2.2万円増の24.6万円で過去最高となっています。これに対して私立中学校に通う子どもの補助学習費は19.5万円で、公立を下回っています。特に中3の補助学習費は、公立が38.0万円に対して、私立は21.3万円でした。高校受験を控えた中3の学習塾費用が、公立中学校の学習費総額を引き上げているといえそうです。

公立高校でも、学習塾などの補助学習費は前回調査より1.3万円増の13.5万円と過去2番目となった他、私立高校でも同2.2万円増の20.5万円と、やはり過去2番目でした。高3の補助学習費を見ると、公立は18.7万円、私立は27.6万円で、こちらは中学校の場合と異なり、私立のほうが補助学習費は多くなっています。いずれにしろ、高校受験と大学受験に伴う学習塾などの経費が家計の大きな負担となっていることは確かなようです。

また、家庭の年収別に学習塾などの補助学習費の支出状況を見ると、公立中学校の場合、年収400万円未満の家庭で15.5万円に対して、400万~600万円未満は19.6万円、600万~800万円未満は25.4万円、800万円~1000万円未満は31.5万円、1,000万~1,200万円未満は34.3万円などとなっており、家庭の経済力による教育格差が広がっていることがうかがえます。教育格差の是正のためにも、給付型奨学金の創設などの対策が望まれます。

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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