学習時間は小・中・高校生とも回復へ 「確かな学力」路線の影響、顕著に
ベネッセ教育総合研究所では、2015年6月から7月にかけて、小学5年生・中学2年生・高校2年生を対象に「第5回学習基本調査」を実施いたしました。
- ※ベネッセ教育総合研究所「第5回学習基本調査」
- http://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=4801
主な調査結果は、以下の通りです。
■学校外学習時間の増加と主体的・協働的な学習の広がり--学習は量・質ともに変化
1. 小中学生の学校外の平均学習時間は、前回に引き続き増加。1990年の調査開始以来、減少を続けていた高校生についても増加に転じる。
●小中高校生ともに、2006年比で平均学習時間が増加した(小学生・高校生:約14分増、中学生:3分増)。25年間でみると、1990年代には減少傾向にあったが、小中学生は、2001年を境に増加傾向にかわり、小学生は今回過去最長時間となり、高校生も中上位層を中心に今回初めて、増加に転じた。
2. 学習時間の増加の背景には宿題時間の増加の影響がみられる。
●全体の学習時間と並行して宿題や課題の時間も前回比で上昇しており(小学生:13分増、中学生:7分増、高校生:9分増)、学校による家庭学習指導の強化が、学習時間全体の増加に寄与していると考えられる。
●宿題の内容をみると、小・中学生では「自学ノートなど自主的な学習」の頻度が高く、「週4日以上」が小学生42.6%、中学生53.4%にのぼる。宿題も自分で調べたり考えたりするものが多くなっている。
3. 調査や発表などの主体的・協働的な学習を「好き」という回答が増加。
●授業で好きな学習方法をたずねた結果では、自分で考えたり調べたりする活動やグループ活動に関する項目で上昇がみられた。特に「考えたり調べたりしたことをいろいろ工夫して発表する授業」は、全体の比率はそう高くはないものの、小・中・高校生とも今回10ポイント以上上昇している。
■意識--勉強の効用感の上昇、将来観・社会観の変化
4. 勉強が将来の生活や成功に役立つと考える子どもが増えている。
●勉強の効用は、特に中高生で上昇がみられ、「心にゆとりがある幸せな生活を送るため」や「よいお父さん、お母さんになるため」といった生活の豊かさへの有用感とともに、「お金もちになるため」「尊敬される人になるため」といった地位達成に関連する項目も10ポイント以上上昇している。
5. 「いい大学を卒業すると将来、幸せになれる」という考えが小・中・高校生とも、10ポイント以上増加
●「いい大学を卒業すると将来、幸せになれる」という考えを肯定する割合は、これまでほとんど変化がなかったが、今回大きく上昇した(小学生:16.9pt増、中学生:16.0pt増、高校生12.8pt増)。「将来、一流の会社に入ったり、一流の仕事につきたい」も小・中・高校生とも10ポイント前後増加しており、いい大学、一流の会社・仕事といった志向が高まっている。
■調査結果からみえてきたこと
この調査は、大学入試センター試験がスタートし、受験競争の弊害や詰め込み教育が問題視されていた1990年に開始しました。その後、国の方針がゆとり教育へシフトしましたが、2000年前後の学力低下論争を経て、再度、学力向上路線へと転換しました。変動の25年の中で、子どもの学びがどう変わっていったのか、本調査は時代の軌跡を示しているとも言えます。
この間、90年代に減少していた学校外の学習時間は、小・中学生が2001年を底に、高校生も2006年を底に回復傾向にあり、国の政策の動きと符合する形で推移しています。また、今回の結果では、宿題が増加しており、学校の家庭学習指導の強化の影響がみられるとともに、一方では、活用力・探究力といった新たな学力を育むための主体的・協働的な学習活動も徐々に浸透しつつあることがわかります。いわば、「確かな学力」のもと、主に学校主導で「量」が増加するとともに、主体的・協働的な学習スタイルの転換へと、学びの「質」にも変化の兆しがみられてきているのが現在の状況であると言えるでしょう。