小中女子の体力が過去最高に 男子は伸び悩み目立つ‐斎藤剛史‐

スポーツ庁は、小学5年生と中学2年生のほぼすべての児童生徒を対象に実施した2015(平成27)年度の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(全国体力テスト)の結果をまとめました。それによると、小中学校とも女子がテスト開始の2008(平成20)年度以降で最高を記録する一方、男子は伸び悩んでいます。女子には、依然として運動する者としない者との二極化傾向が見られますが、運動嫌いの女子に対する働きかけが功を奏したようです。

女子は小学校で「反復横とび」「50m走」など5種目で、中学校でも「立ち幅とび」と「持久走1000m」を加えた7種目で、いずれもテスト開始の2008(平成20)年以降で最高を記録し、小中学校とも体力合計点が過去最高となりました。
女子は男子よりも運動する時間が少なく、特に中学生になると、運動する者としない者に二極化する傾向があります。今回も中2女子では、1週間のうちの総運動時間(体育の授業を除く)が「ゼロ分」が14.1%(前年度比0.7ポイント減)、「1・60分未満」が6.8%(同0.2ポイント減)で、合計すると、ほとんど運動しない女子が依然として約2割いる計算です。
しかし、運動が「好き」という女子は、小5が56.5%(同1.4ポイント増)、中2では48.1%(同2.7ポイント)と、わずかながら増加しています。スポーツ庁では、「運動嫌いの女子に対する(地方自治体の)取り組みの成果が出てきた」と分析しています。たとえば、和歌山県教育委員会などは、女子が取り組めるよう、エクササイズやダンスを全校に入れるなどの体力づくりの取り組みをしています。

一方、男子は、小学校で「上体起こし」など2種目が過去最高だった半面、「握力」「ソフトボール投げ」など3種目が最低となり、結果的に体力合計点は過去最低となりました。同様に中学校でも「反復横とび」など2種目が過去最高だったものの、「握力」と「ハンドボール投げ」が最低となり、ほぼ前年度並みにとどまっています。特に、「握力」と「ハンドボール投げ」の記録の低下が著しく、「伸びしろがなかったため(握力とハンドボール投げの影響のため)落ちた」(スポーツ庁)といえます。女子の体力問題が解決の兆しを見せ始めたのに対して、今度は男子のほうに問題が出てきたようです。
しかし、「握力」と「ソフトボール/ハンドボール投げ」が過去最低だったのは、実は女子も同様です。ただ女子は、他の種目の記録がこれまで低かったため、全体的な底上げができたものの、男子にはそれが通用しなかったようです。

「走る」などと異なり、「握る」「投げる」の動作は、本来、幼児期からの遊びや生活の中で習得し、鍛えられるものだといわれています。キャッチボールをしたり木にぶら下がったりする機会が少なくなったなど、現代の子どもの生活の変化が「握力」と「ハンドボール投げ」の低下につながっているともいえます。そう考えると、この問題の根は意外と深いのかもしれません。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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