マイナンバー制度で私たちの生活はどう変わるの?

2015(平成27)年10月からマイナンバーの通知が始まりました。ところが、聞こえてくるのは、「マイナンバーのカードを交付するのに手数料がかかる」などと、まだ制度がよく知られていないために起こる詐欺の被害です。
これから、マイナンバーは出生した時から一生ついて回る大事な個人番号となります。たとえ本人がいらないと言っても自動的に付帯されます。ぜひ、ここで正しい知識を学んでおきましょう。



マイナンバーってそもそも何のため?

マイナンバーは、主に3つの用途のために使用されます。3つとは、社会保障税金災害対策に関する公的手続きの書類です。といっても、なかなか具体的にはイメージは湧いてこないでしょうから、今回は特に社会保障と税金を取り上げて見ていきます。

まず、社会保障についてですが、子どもの出生届を提出する時の児童手当の認定請求書とその後に毎年提出する現況届、健康保険に加入させる扶養の手続き書類、成長して進学する時の奨学金の手続き書類、さらには、その子どもが働きだすと、雇用保険や健康保険、年金の加入手続きのためと、さまざまな公的書類に記載が必要になってきます。

病気やけがになった時には、健康保険の高額療養費や労災の障害給付など、給付を受け取るためにもマイナンバーの記載が必要となります。ただ、年金の場合には、情報流出の問題もあり、セキュリティー対策ができてからということで、いったん記載はお預けになり、2017(平成29)年からの運用となる予定ですが、将来的にはすべての社会保障に関する公的手続きの書類に必要になるのは間違いありません。



税金はあまり関係ないと思っていても

税金はいつの間にか払っているので、あまり意識はしていないかもしれませんが、税金を確定するための書類に、マイナンバーの記載が必要になります。自営業であれば、ご自分で収入はいくらで経費がいくらだから税金がいくらくらいと、かなり意識をしているものですが、給与から天引きされている会社員ではそうもいきません。ところが、税金を確定するために、家族を扶養しているのであれば、税制上の扶養控除を受けるために、会社に家族のマイナンバーを提出しなければなりません。

その他にも、マイホームを購入して住宅ローン控除を受ける時や、保険金を受け取った時、資産運用をしているのであれば証券会社への届け出、親や兄弟など親族が亡くなり、相続が発生した時の相続税の申告など、税金を払う時だけでなく、確定するための書類すべてに記載が必要となってくるでしょう。相続が発生しても税金がかかるようなことはないから、とおっしゃるご家庭も多いですが、相続税法は改正されています。親も自分も持ち家のかたは、その評価を下げる方法を考えておかないと、相続税が課税されるご家庭も増えてきています。たとえ相続税を払わなくて済む場合にも、申告だけは必要というご家庭もありますので、税金関係の提出書類というのは意外と多いことがわかるでしょう。

税金の額によって、就学援助や奨学金などの要件に該当するかどうかなど、ご家庭での教育費の計画に影響が出るケースもあります。マイナンバー制度が始まることで、これまで以上に、家計の税金に敏感にならざるを得ないでしょう。



これまでの個人情報保護法とどう違うの?

これまでも個人情報保護法という法律が存在していましたが、今回はかなり違う点があります。提供する際に本人確認がされるということです。マイナンバーを提供するのに、個人番号カードと身元確認が義務付けられています。写真が入っている個人番号カードであれば1枚で要件を満たしますが、写真の入っていない番号通知カードの場合は、写真の入っている運転免許証またはパスポートなどの本人確認書類をあわせて提示する必要があります。もし、手続きをする人が代理人であるなら委任状、番号確認、代理人の身元確認など、更に複雑な添付書類となるでしょう。

会社に扶養家族のマイナンバーを提出するケースなどについては、会社がわざわざ家族について身元確認をすることは考えられませんから、会社が従業員に委任する形となります。個人情報保護法での取扱事業者というのは、5,000件という、かなりたくさんの個人情報を取り扱う事業者と定義されていましたが、今回はすべての個人番号を扱う事業者に関して罰則が規定されていますので、提出書類に関していちいちの身元確認はかなりわずらわしいものになるはずです。



個人がしておくべき注意点とは

マイナンバーは、使われる場面がかなり多いということがわかったはずです。では、通知カードをもらった時、どうすればよいのでしょう。通知カードには写真が入っていません。ですから、これから使う時にいちいち本人確認を求められることを考えれば、1枚にするために個人番号カードを写真付きのものに変えるのもよいでしょう。申請しておくと、2016(平成28)年1月より交付されます。

私は社会保険労務士ですので、会社の手続きをよくするのですが、その際に、年金手帳の紛失や健康保険証の紛失などが多々あります。ですから、従業員の採用の際に、紛失届と再交付申請書を提出することはよくあることです。忘れたり、紛失したり、情報が漏れたりしないよう、万全の注意をしましょう。特に5人家族の我が家もそうですが、家族で別々のカードになると保管するお母さんは大変です。ただ、紛失したら再交付すればよいという軽い気持ちは持たないようにしていただきたいものです。

最後に、マイナンバーは個人情報の塊ですから、第三者に教えることはもちろん禁止です。聞かれても答えてはいけませんし、本人がもし同意していたとしても、正当な目的以外の使用は禁止されています。これは、個人情報保護法よりも重い罰則が規定されていますので、取り扱い担当者以外が会社でこっそりのぞき見をしたり、勝手に収集したりということもできません。

これまでは、税金は申告主義でしたから、申告しなければ勝手に税金が課されるということはあまりありませんでしたが、これからは、たとえば主婦でも資産運用していると扶養家族をいったん抜けなければいけなくなるとか、何らかの知識不足があらわになってあとで大変な思いをすることもあるでしょう。実際に利用される場面は2016(平成28)年からですから、まだ実際に大変さは実感できませんが、これから、マイナンバーとひも付けされる情報はますます増える予定です。マイナンバーに関しては、これまでの個人情報保護法以上の注意を払うことが必要でしょう。

<参考サイト>
●マイナンバー推進協議会
●政府広報オンライン


プロフィール


當舎 緑

社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャル・プランナー。資格取得をはじめ、教育・育児、マネーなど一般消費者向けのセミナー、執筆活動を行う。子どもにかけるお金を考える会(http://childmoney.grupo.jp/)のメンバー、一般社団法人かながわFP生活相談センター(https://kanagawafpsoudan.jimdo.com/)の理事でもある。金融機関での年金相談はじめ、区役所、県民相談の窓口での行政相談、病院でのがん患者就労支援相談の窓口で一般向けの相談にも応じている。家庭では3児の母でもある。

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