幼稚園と小学校のカリキュラム連携、いまだ5割にとどまる‐斎藤剛史‐

小学校に入学した際にさまざまな問題が発生する「小1プロブレム」を防止するため、幼稚園と小学校を円滑に接続するスタートカリキュラムの作成など幼小連携の重要性が増しています。そうしたなか、小学校と何らかの形で交流している幼稚園は約8割に上るものの、教育課程に関して連携した幼稚園は約5割にとどまっていることが、文部科学省の「幼児教育実態調査」でわかりました。背景には、市町村教委の消極的な姿勢があるようです。

幼稚園と小学校のカリキュラム連携、いまだ5割にとどまる‐斎藤剛史‐


以前こちらの記事でも同様の調査は紹介しましたが、今回の調査結果によると、全国の公私立幼稚園のうち、2013(平成25)年度中に小学校と何らかの交流事業を実施した幼稚園は76.9%(公立96.3%、私立65.7%)、小学校教員との交流を実施した幼稚園は72.1%(各90.9%、61.2%)となっています。一方、小学校におけるスタートカリキュラムを踏まえた幼稚園での指導計画作成や小学校との情報交換など、教育課程編成に関する連携を実施した幼稚園は54.8%(各69.6%、46.3%)でした。前回調査した2011(平成23)年度と比べると5.5ポイントの増加で、初めて5割を超えました。しかし、幼小連携の重要性が叫ばれるようになってから久しいことを考えれば、最も重要である教育課程の編成に関連した幼稚園と小学校の連携は、あまり進んでいないとも言えそうです。

幼小連携があまり進まない原因の一つが、私立幼稚園と公立小学校の間にある「壁」です。文科省の調査結果を見ると、公立幼稚園の9割以上が小学校との交流事業や教員同士の交流活動を実施しているのに比べて、私立幼稚園は約6割程度と少なくなっています。教育課程の編成に関する連携でも、公立幼稚園が約7割なのに対して、私立幼稚園は5割以下となっています。逆に言えば、私立幼稚園と公立小学校の間の壁を崩して連携を増やすことができれば、幼小連携が大きく進展することが可能でしょう。

なぜ、私立幼稚園と公立小学校の連携が進まないのでしょうか。一つには、私立幼稚園はスクールバスなどを利用して広い地域から子どもたちを集めるところが多いため、学区の子どもを対象とする公立小学校とはあまり関係が深くないことが挙げられます。
それ以上に問題なのは、市町村の対応のようです。市町村の「幼小接続状況」を見ると、教育課程の編成まで踏み込んだ連携を実施しているのは21.5%のみで、ほかは「連携の予定がない」9.6%、「まだ検討中」7.8%、「交流はあるが教育課程編成・実施は行われていない」59.6%などとなっており、市町村の8割近くが積極的に幼小連携を行っていません。さらに行政組織の問題として、公立と私立の幼稚園がある市町村のうち、教育委員会が私立幼稚園を所管しているのは29.4%、私立幼稚園のみしかない市町村のうち、教育委員会が窓口となっているのは42.0%でした。あとは首長部局が所管しているか、所管窓口自体がないという状況です。

幼小連携を推進するためには、市町村教育委員会が私立幼稚園などに積極的に連携を働き掛けていくことが不可欠といえそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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