「スタートカリキュラム」って何? ≪小1プロブレム≫対策
新学期から小学1年生で、「スタートカリキュラム」が実施されることは、先の記事でも触れました。小学校に入学した段階で問題行動が多発する「小1プロブレム」という言葉は知っていても、スタートカリキュラムという言葉を聞いたことがある保護者のかたは、そう多くはないと思います。改めて、詳しく説明しましょう。
スタートカリキュラムとは、小学校に入学した子どもたちが小学校に慣れることができるようにするための、教育課程(カリキュラム)の工夫のことです。小学校の新学習指導要領が4月から本格実施されたのに伴い、文部科学省は、すべての小学校で積極的に取り組むよう求めています。
東京都教育委員会の調査によると、都内の公立小学校の18.2%で、授業中に勝手に歩き回るなど、小1児童の不適応状況が発生しています。5校に1校で、小1プロブレムが起きている計算です。さらに発生した学校のうち56.7%の学校が、7か月以上たっても不適応状況が解決していないと回答しており、問題の深刻さをうかがわせます。
小1プロブレム対策では、幼稚園や保育所と小学校が、密接に連携を取ることが必要です。ところが、文部科学省の調査によると、市町村教育委員会の約80%が、幼小連携などの取り組みをしていないことが明らかになりました。このため、文科省の有識者会議が報告書をまとめ、幼児期と児童期(小学校段階)をつなぐスタートカリキュラムという考え方を、小学校に導入することを打ち出しました。
特に注目すべき点は、小学校の責任を明確にしているところです。実は、小学校教員の中には、「幼稚園は遊びばかりで、わがままな子どもを育てる」「保護者のしつけが悪い」という古い見方から、小学校は「被害者」だという意識が根強く残っています。これに対して報告書は、幼稚園・保育所と小学校が連携して対処すべきであり、そのための努力を小学校はすべきだ、と提言したわけです。
具体的には、幼稚園や保育所と連携を取りながら、幼児期と児童期を円滑につなぐためのスタートカリキュラムを、低学年の「生活科」を中心に実施し、学級担任だけに任せず、学校全体で取り組むこととしています。具体的には、▽子どもの集中できる範囲に合わせて、授業時間を15分や20分の単位に分割する▽低学年を、少人数学級や複数担任制にする▽養護教諭や栄養教諭も指導に加わる……などを例示しています。
さらに、スタートカリキュラムなどに対する保護者の理解を重要課題に挙げ、教育委員会や各学校は、きちんと内容を保護者に説明すること、就学前の子どもを持つ保護者に小学校における学習や生活について情報提供すること、小学校と幼稚園などの保護者双方の意見交換の場を設けることなども求めています。幼児期から小学校段階への移行には、保護者の理解と協力も欠かせないということでしょう。