少年犯罪は減少しているのに社会の8割が「増えている」と回答‐斎藤剛史‐

内閣府の「少年非行に関する世論調査」によると、一般の人々の約8割が、少年非行は「増えている」と回答しています。いじめや残忍な暴力行為など、少年による犯罪が報道されるたびに、少年非行の増加を懸念する声が高まっている表れともいえます。しかし警察庁のデータによると、実際の少年非行は減少を続けており、戦後最少を更新しています。どうして社会の意識と非行の実態の間に、ずれが生まれるのでしょうか。

世論調査では、少年非行について「かなり増えている」が42.3%、「ある程度増えている」が36.3%で、合わせて約8割の人々が少年非行は増えていると感じています。増えていると思う少年非行としては、「掲示板に犯行予告や誹謗中傷の書き込みをするなどインターネットを利用したもの」「突然キレて行うもの」「凶悪・粗暴化したもの」「集団によるもの」などが挙げられています。これらの犯罪は、マスコミなどにもよく取り上げられることが背景にあるようです。社会的に見て問題だと思う少年非行としては「いじめ」が53.5%でトップ、次いで振り込め詐欺など「高齢者をねらった詐欺」「刃物などを使った殺傷事件」「インターネットを利用した非行」などと続いています。いじめや犯罪予告などの卑劣な犯罪、集団による暴力など凶悪な犯罪が少年の間で増えており、それに比例して少年非行も増加しているというのが、社会一般の認識のようです。

ところが、警察庁のデータ(外部のPDFにリンク)を見ると、2014(平成26)年中に刑法犯として検挙された少年(14・19歳)は4万8,361人で、戦後最少となっています。2015(平成27)年上半期(外部のPDFにリンク)も前年同期より減少しており、同年も検挙者数は戦後最少を更新しそうです。
少子化により子どもが減っているのだから犯罪件数も減るのは当然、という見方もあるでしょう。しかし、少年1,000人当たりの検挙者数を見ると、2014(平成26)年は6.8人で、戦後最多だった1982、83(昭和57、58)年の18.8人の半分以下となっています。さらに刑法に問われない13歳以下の少年の補導件数も減少を続けています。

では、なぜ少年非行は増えていると約8割の人々が感じているのでしょうか。陰湿ないじめ、高齢者を狙った卑劣な詐欺、凶悪な暴力事件など社会的に許せない犯罪がマスコミで多く報じられていることも原因の一つでしょう。社会全体が少年非行について、より厳しく受け止めるようになっていることもあるかもしれません。
一方、世論調査では、少年非行が増えた原因として、少年自身の問題では「忍耐力がない、自分の感情をうまくコントロールできない(すぐキレる)」、社会環境では「スマートフォンやインターネットなどの普及により(略)有害な情報を手に入れられる」、社会風潮では「他人の子どもに無関心である、地域の絆が希薄化している」をそれぞれトップに挙げています。

これらの問題については、社会全体で早急に取り組んでいく必要があるでしょう。いずれにしろ、少年非行などを論じる場合、客観的なデータに基づく冷静な議論が大切だと思われます。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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