なぜ? 急増する小学校での暴力行為‐斎藤剛史‐

文部科学省がまとめた2014(平成26)年度「問題行動調査」の結果、対教師暴力や生徒間暴力などの暴力行為が小学校で増加し、過去最悪となったことがわかりました。一方、中学校や高校では、暴力行為が減少しています。一体、現在の小学校で、何が起きているのでしょうか。

2014(平成26)年度中に学校内外で発生した暴力行為(器物損壊を含む)は、国公私立学校全体で小学校が1万1,468件(前年度より572件増)、中学校が3万5,683件(同4,563件減)、高校が7,091件(同1,112件減)で、小学校だけが4年連続で増えており、現行方式で統計を取り始めた2006(平成18)年度以降で最悪となりました。

児童生徒1,000人当たりの発生件数を見ても、中学校と高校は減少しているのに、小学校だけが増えています。さらに気になるのは、加害児童の数を見ると、小6は前年度より減少しているのに対して、小5以下の学年はいずれも増えていることです。
問題行動の低年齢化が、小学校にまで本格的に及んだということでしょうか。そう言い切るのは少し早計でしょう。学校内の暴力行為の場合、発生件数は実質的に学校による「認知件数」を意味しているからです。小中学校の暴力行為の件数を見ると、共に2013(平成25)年度に急増したのが目立ちます。これは大津市の中学生いじめ自殺事件や、それをきっかけとする「いじめ防止対策推進法」の制定などにより、いじめをはじめとする問題行動の把握や対応が厳格化したことが理由として挙げられます。

以前ならば暴力行為とまでは判断されなかった、低学年や中学年の子どもの乱暴な行動が、現在の小学校では暴力行為として「認知」されるようになったことが、発生件数増加の理由の一つとして考えられます。実際、警察の補導や児童相談所への送致など、外部機関による措置を受けた子どもの割合は、中学校に比べると小学校ははるかに低くなっています。
しかし、暴力行為として「認知」されなくても、それと同等の問題行動が以前から小学校で起こっていたとすれば、やはり大きな問題と言わざるを得ません。また、小学校のみ4年連続で暴力行為が増えていることからも、現在の小学校は深刻な状況にあると言って間違いないでしょう。

小学校で暴力行為が増加した理由について、都道府県教育委員会は「感情をうまくコントロールできない児童が増え、ささいなことで暴力に至ってしまう事案が大幅に増加している」などと述べています。ただし、その背景には、コミュニケーション能力に問題のある子どもの増加のほか、さまざまな要因がありそうです。
一方、学級担任制である小学校では、生徒指導関係の組織があっても、実際には学級担任のみが対応している場合が少なくないという指摘もあります。

複雑化する子どもたちの問題行動に対して、学級担任が一人で対応するのはもう困難です。問題行動に対して、学校全体で組織的に対応する体制づくりが、現在の小学校に求められているといえるでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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