国大協が推薦・AO入試での入学者3割を正式目標に 地域人材育成も柱

国立大学の集まりである国立大学協会(国大協)は、これからの国立大学改革の方向性などを示した「国立大学の将来ビジョンに関するアクションプラン」をまとめました。その中では、大学入試改革の一環として、入学者全体の3割を推薦入試やAO入試などにより選抜する、との目標を掲げられています。文部科学省による入試改革を待たずに、国立大学入試の改革は大きく動き出すことが予想されます。

各国立大学は、6年ごとに「中期目標・中期計画」を策定することになっており、アクションプランは、第3期中期目標・中期計画(2016~21<平成28~33>年度)を中心とした改革方針と、そのスケジュールを示しています。
この中で、保護者などにとって最も関心が高いのは、やはり大学入試でしょう。アクションプランは、「確かな学力とともに多様な資質」を持った高校卒業者などを受け入れるため、「推薦入試、AO入試、国際バカロレア入試等の導入を拡大する」と提言。工程表の中では、2015(平成27)年度から21(同33)年度までの間に推薦入試やAO入試などによる入学者を、「入学定員の30%を目標」に拡大すると明記しました。個別入試についても「面接、調査書の活用等(準備から実施へ)」として、一般入試における個別試験で面接の導入や、高校の調査書の重視など、学力検査以外の方法を積極的に活用することを打ち出しています。
大学入試改革のスケジュールは、2015~18(平成27~30)年度と2019~21(同31~33)年度の2段階に分けて示されており、推薦・AO入試などの本格的拡大は19(同31)年度以降となる見通しです。

ところで、これらの内容については、既にアクションプランの「中間まとめ」の際に、当コーナーで紹介しています。ただし、国大協が正式に方針として決めたことの意義は小さくありません。それというのも、大学入試改革を審議している文科省の検討会議が、改革具体化に向けた課題を山積させたまま「中間まとめ」を出したため、大学入試センター試験に代わる新テストの実施などを困難視する見方が、次第に強くなり始めているからです。国大協が目標を明示したことは、新テストの具体化などとは別に、国立大学の入試改革が進展することを意味しており、実現すれば、その影響は計り知れないでしょう。

このほか、各国立大学の機能分化が決定し、その多くが「地域貢献大学」となったことなどを受けて、アクションプランでは、国立大学を「地域の拠点として不可欠な存在」と位置付け、地方の産業界との連携、地域で活躍する人材の育成などを国立大学改革の方向として掲げています。また、近隣地域の複数の国立大学が共同で学生の教養教育を行うことなどを視野に入れ、大学同士での学生定員の再配分を検討すること、なども提言しています。その際には、「入学者選抜における大学の枠組みを超えた選抜単位の設定」なども検討し、実行するとしています。

これから国立大学は、大学入試を含めて、その在り方が大きく変わっていくことになりそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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