保護者が教える生活の中のマネー・リテラシー

子どもが生まれて初めておつかいをする様子を、陰から大人が見守る……というテレビ番組があります。おつかいの内容を忘れる子どもにハラハラしたり、買いすぎる子どもにため息を漏らしたり、我が子にもこんなころがあったなあと思いながら見ることもしばしば。

保護者が教える生活の中のマネー・リテラシー


3歳にもなれば、消費者としてお金を利用する経験を持つことは珍しくありません。保護者に連れられて行ったお店で、お店の人にお金を渡すだけなら、「子ども自身が消費者」とは言えなくても、お店のモノと「交換」できることは学べます。

小学生にもなると、「欲しいものを買ってあげる」と久しぶりに会った祖父母に言われ、とっさにモノが思い浮かばず「お金」と答える子も出てきます。祖父母は苦笑するしかありません(お金のことなど口にしない、無邪気な孫でいてほしかったりしますから)が、欲しいものが見つかるまでの間、お金という形で「保存」しておくことを理解しているのは成長した証ですから、むしろ喜ぶべきかもしれません。



父親と母親で異なる、子どもへのお金教育の意識

「子どもの金銭教育」について保護者たちと話をする時、母親は、身近なお金を上手にやりくりし、無駄遣いをせずに貯蓄できるようになってほしいと願うことが多いようです。一方、父親は、やりくりは教育のうちに入らず、小学校低学年であっても「投資」について学ばせたいと希望したりします。

私は、どちらも必要な知識であり、子どもが社会へ巣立つ日までには、伝えてやりたいと考えています。「やりくり」は大切ですが、「やりくり」のもとになるお金には限りがあります。その「もと」を増やせば「やりくり」は楽になりますから、「やりくり」と「投資」のどちらかを選ぶということではなく、いずれも教えればよいのです。

教える内容は、保護者の行動を日常的に見せるとともに、「具体的」に説明することが大切です。特に、社会との関わりについては、保護者自身も「意識」していないことがあるため、十分に留意したいところです。



口座は子ども自身に開かせる

子ども自身のお金、たとえばお年玉などをしまう場所として、銀行や郵便局などの金融機関に口座を用意することがあります。口座開設は、窓口で行います。自分の名前や住所がしっかり書けない年齢であれば、書類を保護者が書くことになりますので、子どもと一緒に手続きする必要を感じませんし、中高生であれば窓口が開いている時間帯は学校に行っていますから、保護者が開設しがちです。

けれど、お金をしまっておくという行為は同じであっても、預貯金口座と自宅の貯金箱では仕組みが違います。

口座をつくる際、金融機関から名義人の身分を証明する書類の提示を求められます。子どもは、健康保険証を提示することが多いでしょう。病院で使う保険証で、なぜ、身分を証明できるのか、なぜ身分を証明する必要があるのか等、保護者も理由を理解している人は多くないと思います。

自分で説明できないことは、窓口の人に話してもらえばよいのです。口座をつくるという行為は、金融機関との「契約」です。通帳を受け取る際に、契約の中身を記した「約款」をもらえますから、読んでみましょう。

普通口座は、1年に2回、利息が通帳に印字されますが、実際は、毎日、利息が計算されていることが書かれていたりします。
また、利子から税金が差し引かれることから、利益には課税されることを知ることもできます。



お金という道具を通じて世の中の約束事に触れさせる

口座を利用する行為から、「契約」や「税金」という仕組みに触れるわけです。この仕組みから、通帳や印章の保管義務の大切さを知り、税金という助け合いの制度に関わっていることがわかります。

子どもとお金のつきあいは、使ったり増やしたりすることだけではありません。お金という道具を通じて、社会と関わっていくのです。
高校生になってアルバイトをするようになれば、給与から差し引かれていなかったとしても、給与明細の項目を見て社会保険制度について親子で話すことも可能です。

学校では、税金や社会保障の制度があることは学びますが、自分のこととして理解を深めるのは難しいでしょう。ぜひ、家庭で具体的に伝えてあげてください。

プロフィール



「らいふでざいん菅原おふぃす」代表。ファイナンシャルプランナー、教育資金コンサルタント。子育て世帯の教育費を中心としたライフプラン相談、進学資金が不足している高校生と保護者向けの教育資金セミナーおよび親が老後破産しないためのアドバイスに注力中。「子どもにかけるお金を考える会」メンバー。子どもは3人。

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