「正解」ではなく「納得解」 家庭でできるアクティブ・ラーニングのススメ[学校では今]

夏休みの宿題には、算数の計算問題や漢字練習などもありますが、それ以外に子どもが自由に課題を決めて取り組むものもあります。文部科学省では、課題を自分で見つけ、その課題を自分や周りの人と協力しながら解決していこうとする学び方を「アクティブ・ラーニング」と名付け、新しい学び方として推進しようとしています。今回は家庭でも取り組める「アクティブ・ラーニング」について、一緒に考えてみましょう。



「アクティブ・ラーニング」が注目されているのはなぜ?

これからの社会は、何が起こるか予測がしにくい社会と言われています。たとえば、今アメリカに存在する職業の47%は20年後には消滅してしまうだろうと分析するイギリスの学者もいます。正解が何かわからない社会の中では、与えられた問題を解くだけではなく、自分で問題を見つけ、それを解決しようとする主体的な姿勢が必要です。文部科学省が「アクティブ・ラーニング」を推進している理由も、子どもたちが未来の社会を生き抜いていくために必要だと考えるからです。

既に学校現場では、「アクティブ・ラーニング」を取り入れた授業が少しずつ実践されています。「総合的な学習の時間」はそのよい例です。たとえば「学校の通学路は自動車が多く危険だからなんとかしたい」など、子ども自身が日常的に感じている問題を取り上げ、なぜその問題が起こるのか、どうすれば問題を解決できるのかを、仲間とともに考え、解決策を見つけていく授業です。こうした学びを積み重ねていくことで、さまざまな角度から考える力や、何を選択すればよいのかを判断する力、周囲と対話をする力など、これからの社会を生きるために必要な力が身に付いていくのです。



家庭でできる「アクティブ・ラーニング」

「アクティブ・ラーニング」の実践は学校だけに限ったことではなく、家庭の中でも日常的に実践できます。ここでは、お子さまとの日常会話を少し工夫することでできるアクティブ・ラーニングの例を2つご紹介します。

(1)「ゴールをほめる」から「スタートやプロセスをほめ、励ます」へ
「テストで100点取った」「かけっこで1等賞になった」など、子どもが自慢したくなるような結果を出した時はもちろん結果をほめてあげてください。でも、結果だけをほめていると、子どもは結果ばかりを気にするようになってしまい、学びのプロセスの中にある大切な価値を見落としてしまいます。
子どもが「○○をやってみたい」「今から△△を始めよう」と言い出したら、できる限り子どもの「やりたい」気持ちを尊重し、子どもの意志をほめ、励ましてあげましょう。また、よい結果が出なくても、子どものがんばったプロセスをほめてあげましょう。

たとえば、お子さまが悪い点数のテストを見せてきた時には「見せたくないテストを、勇気を持ってお母さんに見せてくれるなんて、エライ」とほめてあげてはどうでしょうか。スタートやプロセスをほめるようになると、結果を気にせず、いろいろなことにチャレンジする姿勢が育っていくのではないかと思います。

(2)正解がわからない「問い」の答えを親子で一緒に考える
皆さんは、親自身が悩んでいたり、わからなかったりする問題を、お子さまに相談したりすることはありますか。たとえば、私は「会社の上司とけんかしちゃったけれど、どうやって仲直りすればよいか?」「この文章のタイトルはどんな感じがよいか?」など、息子に相談することがあります。「そんなの自分で考えてよ」と言われることもありますが、たまに一緒に考えてくれることがあります。正解はないので、親子が対等な立場で議論し、子どもの考えを素直に聞くことができます。

親の悩みだけでなく、親子ともに正解がわからない問いを子どもと一緒に考える場面を設けると、親子でアイデアを出し合いながら、お互いに主体的に納得できる答えを探そうとします。この、正解ではなく「納得解」を見つけることが、主体的に学びに向かう姿勢を身に付け、さまざまな角度で思考をする力をつけるうえでとても大切だと思います。

子どもが大人になるころの未来社会は、一体どうなっているのでしょうか? 今の常識では思いもつかないようなことが起こっているかもしれません。親子で、未来社会のことを議論してみるのも、面白いかもしれませんね。


プロフィール


小泉和義

ベネッセ教育総合研究所 主任研究員。全国の小学校、中学校、高等学校などの現場を取材し、子どもたちの実態や学校での指導課題を踏まえ、「今」と「これから」の教育に必要なことは何かを発信し続けている。

お子さまに関するお悩みを持つ
保護者のかたへ

  • がんばっているのに成績が伸びない
  • 反抗期の子どもの接し方に悩んでいる
  • 自発的に勉強をやってくれない

このようなお悩みを持つ保護者のかたは多いのではないでしょうか?

\そんな保護者のかたにおすすめなのが/
まなびの手帳ロゴ ベネッセ教育情報サイト公式アプリ 教育情報まなびの手帳

お子さまの年齢、地域、時期別に最適な教育情報を配信しています!

そのほかにも、学習タイプ診断や無料動画など、アプリ限定のサービスが満載です。

ぜひ一度チェックしてみてください。

子育て・教育Q&A