私大の学部新増設抑制へ バランス是正、国立大もペナルティー強化

政府が掲げる地方創生の一環として、文部科学省が地方の大学に学生を誘導するため、都市部の大規模校を中心に私立大学の定員超過へのペナルティーを厳格化することは、以前の当コーナーで紹介しました。今回は、都市部と地方の大学生の均衡を図るために文科省が放つ次の矢の内容をお伝えしたいと思います。私立大学の学部設置認可の見直しと、国立大学の定員の扱いです。

現在、私立大学は全体で収容定員を約4万5,000人上回る学生を抱え、そのほとんどが東京・近畿・関西の三大都市圏に集中しています。大都市圏の有力大学などに進学する学生が多過ぎるうえ、そのまま大都市で就職して地元に戻らないことが地方の人口減少の原因の一つになっているというのが、政府の見解です。このため文科省は、入学定員を大幅に超える学生を抱える私立大学に対して、補助金の全額カットという厳しいペナルティーを課すことで入学者数を抑制し、地方の人口減少に歯止めをかけることにしました。ここまでは前にお伝えしたとおりです。ただ、定員超過を抑制する代わりに、新しい学部を設置して大学全体の定員自体を増やすという「抜け道」もあるのではという疑問も出てきます。さらに、国立大学の定員はどうなるのでしょうか。

文科省は大学設置基準を改正して、2017(平成29)年度開設分(2016<同28>年度申請)から私立大学の学部新設認可を厳しくすることにしています。現行は、大学全体の入学者数を入学定員で割った入学定員超過率が「1.30倍以上」の私立大学には、学部の新設を認可しないことになっています。この基準を2017(平成29)年度開設分から段階的に引き下げます。

一方、国立大学についても入学定員超過抑制の対策が強化されることになりました。学生数などに応じて国から交付金を受けている国立大学は現在、入学定員超過率が「1.1倍以上」になると超過人数分の学生納付金相当額を国に返還することになっています。この基準を2016(平成28)年度から段階的に引き下げ、最終的には19(同31)年度に「1.0倍超」としたうえで、しかも公費負担も含めたすべての経費となる教育費相当額を返還させる予定です。つまり国立大学は、2019(平成31)年度から実質的に1人の定員超過も難しくなるということです。

地方創生は、受験生やその保護者にとって思わぬ影響を及ぼす可能性もありそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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