相次ぐ法科大学院の募集停止 2年間で20校

弁護士や検事など法曹を養成するための法科大学院の削減が止まりません。2015(平成27)年に入って熊本大学など既に6校が学生募集停止を表明しており(6月末現在)、14(同26)年以降の2年間で合計20校が、実際に学生募集停止に踏み切っています。いったい、法科大学院に何が起こっているのでしょうか。

法科大学院は米国のロースクールをモデルとして2004(平成16)年度に創設され、原則として司法試験は法科大学院修了者しか受験することができなくなりました。当初、政府が法科大学院修了者の「7~8割」が法曹になれると掲げたため大ブームが起こり、ピーク時の2007(平成19)年度には全国で国公私立合わせて74校もの法科大学院が乱立しました。
ところが、司法試験合格率の低迷で法曹になれない者が続出したことから人気が低下し、学生募集停止を発表する大学院が2010(平成22)年度・1校、11(同23)年度・1校(他校と統合)、12(同24)年度・4校と出始め、13(同25)年度は一挙に9校、14(同26)年度はさらに10校と急増しました。2015(平成27)年度に入ってからも4校が募集停止を発表しており、14(同26)年1月から15(同27)年6月までに限って見ると、実に20校もの法科大学院が学生募集停止を表明した計算になります。これは文部科学省が2013(平成25)年11月に、課題の多い法科大学院に対する補助金大幅カットの方針を打ち出したためです。

法科大学院の削減はまだまだ続きそうです。政府の法曹養成制度改革推進会議が、新たなハードルを法科大学院に課したからです。司法試験合格者は最近、1,800人~2,000人前後で推移していますが、同会議は司法試験合格者を今後、年間1,500人程度にするという目標を示しました。政府は法科大学院創設当初、司法試験合格者を年間3,000人とする目標を立てましたが、日弁連など法曹関係者の反対で実現できず、そればかりか弁護士になっても弁護士事務所に就職できないなど最近の「弁護士余り」の状況を受けて、目標を当初の半分に引き下げたものです。

一方、法科大学院修了者の司法試験累積合格率を「概ね7割以上」とすることも決めました。2014(平成26)年度の司法試験合格率は22.6%にすぎません。法科大学院修了者は修了後5年間まで司法試験を受験できますが、その累積合格率も49.2%(2014<平成26>年度)にとどまっています。累積合格率を同会議の目標である7割以上に引き上げるためには、今後も法科大学院の大きな削減は避けられないでしょう。
文科省は、同会議の決定を受けて2018(平成30)年度までを法科大学院の「集中改革期間」と位置付け、司法試験合格率の低迷校などへの補助金カットなどの方策を押し進め、法科大学院の再編を加速させる考えです。

しかし、再編・削減の対象となるのは地方にある大学院や小規模校が多いことから、このまま進めば法曹養成の役割が都市部の大学院や一部の有力大学院に偏る恐れがあると批判する声も大学関係者の間には根強くあります。いずれにしろ、将来の職業として法曹を志望する子どもやその保護者は、各法科大学院の今後の行方なども慎重に検討しながら大学選びをする必要がありそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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