ノーモア通勤ラッシュ! 小さなアイツらに学ぶ車の未来

朝の通勤ラッシュ時、ずらりとならんだ車。ドライバーに目を向けると、進まない交通状況に苛立ちを隠せない人もちらほら。道が広ければなぁとか、空を飛べる車があればいいのにな、と空想するのも楽しいですが、交通の流れに注目したもっと現実的な解決策があるのです。


集団行動のエキスパート・アリ

 今回、それを教えてくれるのは集団行動のエキスパート・アリ。彼らはきちんと一列に並んで餌を取りに向かい、せっせと身体よりも大きな餌を巣に運び込んでいます。それも迷うことなく流れるように。アリはどうやってこんな一糸乱れぬ統制をとっているのか疑問ですね。

 

もっとも想像しやすいのは、指揮をとるリーダーがいること。しかし、女王アリという巣のリーダーがいることはよく知られているものの、種によっては数百万匹にもなる働きアリのすべてに指示を出しているわけではありません。かといって、働きアリには現場のリーダーがいて、チームを率いているかとそうでもないのです。では、いったいどうやっているのでしょうか?

 

 

答えは童謡の中に

 一糸乱れぬ集団行動の答えは、意外なことに「回りを“見て”いる」から。たったこれだけなのです。アリは互いにふれ合ったり、臭いやフェロモンを触覚で感じ取ることで瞬間的に行動を決定しています。触覚で回りを“見て”いるというわけです。餌を取りに行く時には、同じ巣の匂いをかぎわけることで自分の仲間を認識。また、アリは巣の中と外で匂いが変化するため、外にでた仲間を判別可能になっています。餌の場所を早朝に探しに行ったアリと触覚を合わせることで場所を感知し、偵察アリが残した餌場を示すフェロモンを辿ることで、あの整然とした長い行列を作っているのです。「アリさんとアリさんがごっつんこ」という童謡はアリの標準的なコミュニケーションを表していたと言えるでしょう。

 

 

アリに学ぶ交通

 1匹1匹の行動が相互作用して、全体が協調する。というのはとても不思議な話です。ですが私たちも朝の通勤ラッシュのように、一人ひとりが自由に行動しているにも関わらず、1つの大きな流れを作っているというのはよくあること。アリと違うのは、流れが整っていないというだけです。そのために車に必要なのは、飛ぶことではなく“触覚”といえるでしょう。種々のセンサーを車に搭載し、周辺状況を把握。天候や他の車の動きに応じて速度を調整することさえできれば、車の流れはスムーズになります。車の自動運転が現実的になってきた今、こうしたアリの行進に学んだ技術の研究が注目されています。近い将来、車はアリのように“互いを思いやれる”ものになるかもしれません。

 

 

柏井カフカ
サイエンスライター。
博士号取得後、「科学を世に広めることで、専門家に頼りきりにならない社会を作りたい」と考え、さまざまな記事を手がける。記事のジャンルは専門分野の物理のほか、最新の科学・医療トピックや、IT技術の紹介など多数。

 

 

参考:

NATIONAL GEOGRAPHIC 2006年10月号、2007年7月号

 

 

お子さまに関するお悩みを持つ
保護者のかたへ

  • がんばっているのに成績が伸びない
  • 反抗期の子どもの接し方に悩んでいる
  • 自発的に勉強をやってくれない

このようなお悩みを持つ保護者のかたは多いのではないでしょうか?

\そんな保護者のかたにおすすめなのが/
まなびの手帳ロゴ ベネッセ教育情報サイト公式アプリ 教育情報まなびの手帳

お子さまの年齢、地域、時期別に最適な教育情報を配信しています!

そのほかにも、学習タイプ診断や無料動画など、アプリ限定のサービスが満載です。

ぜひ一度チェックしてみてください。

子育て・教育Q&A