国際バカロレアの認定校拡大にテコ入れ 履修の特例拡大へ

グローバル化に対応するため、政府は、国際的な大学入学資格である「国際バカロレア」(IB)を取得できる認定校を2018(平成30)年度までに200校にすることを目指していますが、現状では達成は困難視されています。このため文部科学省は、高校教育の中でIBカリキュラムを通常の高校科目に代替できるなどの特例を、拡大することにしました。これによって日本の高校教育に、どんな変化が起こることになるのでしょうか。

IBは、ジュネーブに本部を置く「国際バカロレア機構」が運営するプログラムで、IB資格とその成績は、世界の有名大学の多くで受験資格や入試判定に使われています。本来はインターナショナルスクールのための資格でしたが、世界でも多くの高校が採用しており、認定校になればその学校の教育が世界的水準に達している証明にもなります。政府は高校教育のグローバル化を推進するため、2013(平成25)年の「日本再興戦略」の中でIB認定校を、18(同30)年度までに200校にすることを掲げました。ところが国内の認定校は25校、そのうち13校がインターナショナルスクールで、高校は12校しかありません。IB資格の取得には、同機構による認定校でカリキュラム修得後、共通試験に合格する必要があります。しかし、日本の教科・科目とは内容が異なるほか、原則として授業はすべて英語で行う決まりのため、認定校となるのは日本の高校にはハードルが高いのが実情です。

このため文科省は、特例措置を拡大して高校の卒業単位として算定できるIB科目の単位数を、現行20単位から36単位に引き上げるほか、「英語・数学・理科の必履修科目」と「総合的な学習の時間」の単位をIB科目で代替できるようにします。さらに、IB科目が英語による授業を原則とすることを考慮して、国語以外の教科については「英語による指導」で授業を行うことも可能にします。これらの制度改正は今夏に行われ、実際には来春からスタートする予定です。

このほか、文科省は同機構と特別協定を結んで、日本語による授業を一部で認める独自プログラム(日本語DP)も導入しています。IBカリキュラムは、「個人と社会」「理科」「数学」「芸術」など6グループの科目群と、「知の理論」という総合学習や「課題論文」など3つの活動から成っていますが、現在は「個人と社会」「理科」「数学」の3グループの中のほとんどの科目と、3つの活動を日本語で指導できるようになっています。さらに、今回の特例措置拡大で高校生に大きな学習負担を与えることなく、IBカリキュラムと通常の高校の授業を同時に行うことが可能になるため、IBの認定高校が大幅に増えることが期待されます。

ただしIBカリキュラムは、探究型学習や討論などいわゆるアクティブ・ラーニング(AL)による授業を主体としており、知識注入型の一方通行授業や一斉授業などを行うだけでは認定校にはなれません。IB認定校の拡大という政府方針の背景には、日本の高校の授業のあり方を根本的に変えたい、というねらいもあるようです。IBなど関係ないと考える子どもや保護者も少なくないでしょう。しかし、実は高校教育全体に、大きく関わってくるかもしれない話なのです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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