「自分事」になれば、子どもはやる気になる![やる気を引き出すコーチング]
「『勉強しなさい!』と言っても、それでやる気になるわけじゃないのはよくわかっているんですけれど、ついつい言っちゃいますよね。でもやっぱり、勉強はしておいたほうがいいと思うんですよ。そう思いませんか? そこが子どもにはわからないんです」
こんなふうに嘆かれる保護者のかたのお話を折々に伺います。
おっしゃっているお気持ち、よくよくわかります。そこで、あらためての質問なのですが、「なぜ、勉強はしておいたほうがよいのでしょうか?」。
こう聞かれて、保護者のかたではなく、お子さん自身が、この質問に自分の言葉で答えることができなければ、勉強へのやる気はなかなかわかないのでは?と思います。
「勉強をするとどんないいことがある?」という質問の効果
ある学習塾で、面白いお話をお聴きしました。
「勉強をすると、どんないいことがあると思いますか?」
という質問を投げかけて、子ども同士が話し合う時間をとっているそうです。
「勉強をするといい点数がとれる」
「先生や親にほめられる」
「親がやさしくなる」
「堂々と遊べる」
「友達に尊敬される」
「うれしくなる」
「自分に自信がつく」
「次もがんばろう!というやる気がわく」
「頭がよくなるから、もっといろんなことがわかるようになる」
「行きたい学校に行ける」
「やりたいことがやれる」
「自分がなりたいものに近づける」
「自分の未来が広がる」
などなど、子どもたちは、けっこう長期的な視点でも考えるようになるそうです。
この話し合いをすることで、勉強は「しなくてはならないもの」ではなく、「自分にとってのいいことにつながるもの」へと変わるので、自ずとやる気スイッチが入るようです。少し遠回りに感じるかもしれませんが、「勉強しなさい!」と言い続けるよりは、よほど効果的だと私も思います。ご家庭の中でも一度、一緒に考えてみられてはどうでしょうか。
行動の選択肢を示して選択させる
小学校1年生の男の子がいるAさん宅では、子どもがダラダラと出かける準備をしないとか、なかなか宿題を始めないなどの場面で、こんなふうに問いかけているそうです。
「○○ちゃん、ちょっと一緒に考えてみよう!
(1)今すぐ着替える。出かける準備が終わったら、出かける時間までテレビを見る。
(2)あとで着替える。それまでは何もしない。あとで時間がなくなってあわてる。
の2つだったら、(1)と(2)のどっちがいい?」
具体的に今、自分がとる行動とそれによって引き起こされる未来をイメージさせて、自分で選ばせるそうです。単に、「早くしなさい!」と言われるよりも、こっちのほうがよさそうだなと自分で納得できると、その行動をとるようになるのだそうです。宿題の場合も同じです。
「○○ちゃん、(1)と(2)のどっちでいく?
(1)今、宿題をやる。そのあと、ごはんを食べて、お風呂に入るまで遊ぶ。
(2)今、遊ぶ。ごはんを食べたあと、眠い中で宿題をする。夜、遊ぶのはなし」
と、選択肢を示します。もちろん、「今、どうしても遊びたい!」という気持ちが抑えられない時もありますが、「夜、遊ぶのはなし」を選択してしまうと、あとがつらいことを学習し、いかに早めに終わらせるかを考えるようになるそうです。
人から「~しなさい」と言われても、「自分事」になっていないうちは、まったくスイッチが入りません。「やらないとあとで困るから」と言われても、それが、自分自身にふりかかることとしてイメージできなければ、単なる一般論でしかありません。しかし、実際にイメージがわいて、自分にとって、「こうしたほうが得。こうしたほうが絶対いい!」と思えたら、自ずとそこに向かって動きます。
こちらの価値観を言って聞かせるのではなく、本人が「自分事」として考えられるように関わっていけたら、お互いに、とてもよい気分でいられるだろうなと思います。
『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』 <つげ書房新社/石川尚子(著)/1,620円=税込み> |