保護者の「質問力」を磨こう[学校では今]

今回は、子どもの好奇心を引き出す「質問の仕方」についてお話ししたいと思います。

子どもからの質問攻め ~ある学校での出来事

先日、茨城県に新設されたある小学校の授業を見学しました。授業のあと、子どもたちに囲まれて質問攻めにあいました。「どこから来たの?」「なんでここにいるの?」「お昼ごはんは何を食べるの?」「どこで食べるの?」「授業を見て面白かった?」……。果てしなく質問は続きました。好奇心旺盛な子どもたちだなあと感心しました。この学校の子どもたちは、いろいろなことに興味・関心を持ち、知りたいと思うことをどんどん質問することを奨励する教育を受けているのでしょう。
知りたいと思った「疑問」を「質問」に置き換えて相手と対話をすることは、新しい情報を獲得し、自分の行動を豊かにしていくための大切なスキルです。しかし、そのスキルを磨くためには、まず「知りたい」という意欲がなければ始まりません。
子どもが好奇心を持っていろいろなことを「知りたい」と思うようになるためには、一体どうしたらよいのでしょうか。



保護者の質問力を高めるヒント

子どもが好奇心を持つためには、豊かな体験を積むことが有効ですが、時間や経済的な制約の中でそうした機会を多く持つことは、なかなか難しいでしょう。ではどうすれはよいのでしょうか。日常生活を通じて子どもの好奇心を高める方法の一つは、親自身の子どもへの「質問力」を高めることです。今回は、学校の先生方から伺った、「親の質問力を高めるふたつのヒント」を紹介します。

(1) 保護者自身が好奇心を持って質問すること
まず、子どもが話をしてきたら、保護者は興味を持ってしっかり聞いてあげることです。子どもの気持ちに寄り添って「共感」することが、コミュニケーションのベース。そのうえで、「もっと知りたいな」と思ったことを子どもに質問してみてください。でも、子どもの話にあまり興味がなければ、質問内容が思い浮かびませんよね。そんな時のポイントは、「保護者自身の経験と結び付けた質問をすること」です。たとえば、子どもが「今日の授業はつまらなかった」と言ってきたとします。その子はひょっとしたら、授業内容のことを言いたかったのではなく、休み時間に友達とケンカしたことが気になっていたのかもしれません。ご自身の経験でもそんなことはありませんか? もしそんな経験があったのなら、「お母さんの場合はね、授業がつまらない時は、たいてい友達とケンカした時だったね。友達とはうまくいっているの?」と質問してみるのもよいかもしれません。子どもの答えはまったく別のところにあるかもしれませんが、大切なのは、保護者自身が本当に「知りたい」と思っていることを質問する態度です。保護者自身の経験に結び付いた質問であれば、興味関心を持って質問ができると思います。保護者自身が好奇心を持って子どもに質問をすることを日常的に実践できれば、子どものコミュニケーションの姿勢にもよい影響を与えるはずです。

(2) 質問には質問で返す
子どもが「今日の夕飯は何?」と聞いてきたら、どう返答しますか?
「今日はカレーよ」と答えてしまったら、子どもは喜ぶかもしれませんが、興味関心もそこで途切れ、会話も終わってしまいます。そこで、子どもへの返答にひと工夫。「さて何でしょう?」でもよいです。子どもにもう一度質問で返してみましょう。今度は別の質問をしてくるはずです。「ハンバーグ? ギョウザ?」。もしそんな質問が返ってきたら、もう一回質問で返しましょう。「ヒントは、今月1回も食べていないもの。なーんだ?」……。
子どもが発した、たった一つの質問をうまく生かして、複数の質問を生み出すことができれば、子ども自身が答えを想像しながら、質問をすることができるようになっていきます。
日常の中に子どもが質問をする機会や数をたくさんつくることが、子どもの好奇心を広げる下地になっていくのです。


今回は、学校での優れた取り組みの中から、親子で活用できる対話のヒントをご紹介しました。コミュニケーションのスキルを高めることは、これからの社会で生きていくために不可欠です。そして、そのスキルを高めるためにいちばん大切なのは、周囲の人や、社会のさまざまな事象に興味・関心・疑問を持つことなのです。保護者自身も、多くのことに興味関心を持てるようにしていきたいですね。


プロフィール


小泉和義

ベネッセ教育総合研究所 主任研究員。全国の小学校、中学校、高等学校などの現場を取材し、子どもたちの実態や学校での指導課題を踏まえ、「今」と「これから」の教育に必要なことは何かを発信し続けている。

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