よく眠り、よく学べ、眠りで高める集中力

緑あざやかな季節、部活にも勉強にも(?)身が入ります。熱中するあまり、つい休憩を後回しにする人もいるでしょう。しかし生活リズムを崩してしまっては肝心なときに実力を発揮できません。バランスよく休憩を取って、上手に集中しませんか。


睡眠でしか取り除けない疲れがある?

 部活や勉強にのめりこんでいると、気づかないうちに疲れをためていることがあります。体の疲れは例えばぬるめのお風呂につかることで、頭の疲れは好きな音楽を聴くなど気分転換をはかることで、ある程度は解消できそうです。しかし、それらの一時的な対処法では取り除けない、第3の疲れがあるのをご存じですか。

 

疲労を医学的に分類する方法はいくつかありますが、体の疲れ、頭の疲れに加えて、特定の部位に現れない漠然とした体や気持ちのだるさを、疲れの一つと考える学説もあります。といっても堅苦しい話ではありません。気持ちの疲れのことです。皆さんも、これといって体の調子が悪いわけではないのに、「なんとなく学校へ行くのがおっくうだな」、「今日は友達とのおしゃべりにも気が乗らないな」と感じたことはありませんか。こういった気持ちの疲れを取り除いてリフレッシュするためには、お風呂や気分転換よりも根本的で、なおかつ最も自然な休息方法、すなわち睡眠が欠かせません。

 

 

よい眠りで集中力を高めよう!

 コンコーディア大学(カナダ)の研究チームが、睡眠障害について平均70歳の194人と平均20歳の136人とを比較調査したところ、老人は睡眠状態を《続けること》が困難であるのに対し、若者は睡眠状態に《入ること》が困難であるという傾向の違いが明らかになりました。また、単純な計算を繰り返すテストで集中力を測ると、熟睡できなかった若者は同じ条件の老人に比べて2倍以上の割合で集中力が不足するとわかりました。

 

つまり中高生の年代にとっては、集中力を発揮するうえで、質の良い眠りが大人以上に必要だということです。しかも興味深いことに、若者も老人も、眠りの主観的な《深さ・浅さ》は客観的な睡眠時間の《長・短》とあまり関係がなかったのです。

 

 

大事なのは生活のリズム

 良い眠りを得るには、長く眠るよりも生活にメリハリをつけるほうが、より有効です。睡眠時間が長いほど眠りの質が良くなるという医学的な根拠はありません。むしろ生活時間のメリハリを、生まれつき備わっている体内時計に合わせましょう。体内時計とは、細胞の再生やホルモンの分泌にリズムをもたらす働きで、日の出・日没によって毎日調整されます。ですから体内時計のリズムと眠気のリズムとを合わせておくためには、夜の時間帯を休息にあてて、早めに布団に入るのが望ましいのです。

 

「○時間眠らなくちゃ!」と意識しすぎるのは、かえってストレスのもと。まだ眠くなくても、布団に入ったら一度目をつぶって肩の力を抜き、深呼吸しましょう。それだけでも気持ちの疲れは軽くなります。なかなか眠りに入れなくても、それはむしろ若さの証拠。焦らなくてよいようです。毎日決まった時刻に布団へ入る習慣をつければ、生活にメリハリができ、だんだんと熟睡を得やすい体質になります。それが、冒頭で紹介した気持ちの疲れに対する、根本的な対処法です。

ずっと張りつめて勉強していると集中力は持続しません。適度の休憩を挟みつつ、夏からの学習生活を充実させてください。

 

 

【参考文献】

・I. Alapin et al., “How Is Good and Poor Sleep in Older Adults and College Students Related to Daytime Sleepiness, Fatigue, and Ability to Concentrate?”, Journal of Psychosomatic Research, vol. 49, 2000, pp. 381-390.

・J. A. Buckhalt et al., “Children’s Sleep and Cognitive Functioning”, Child Development, vol. 78, no. 1, 2007, pp. 213-231.

・井上昌次郎『眠る秘訣』、朝日新聞出版、2009年.

・亀井雄一、岩垂喜貴、「子どもの睡眠」、『保健医療科学』61号、2012年、pp. 11-17.

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