国語辞典は鑑(かがみ)?鏡(かがみ)?
今回は国語辞典を作るときに大変なのはどのようなことなのかなど、株式会社ベネッセコーポレーション 小中学校事業部 佐々木佳世さんの辞書作りに対する思いにじっくりとせまってみました!
国語辞典作りはここが大変!
国語辞典は、年単位の作業で作られていきます。見出し語を決めて、用例を作り、原稿の入稿をして、何度も修正をかけていくんです。この長くて入念な作業は、まさに「辞典は正しいもの」という信頼にこたえようとする作り手側の努力でしょう。
「どんな出版物も間違いがあってはならない」というのは同じですが、特に辞書の場合、一度買ったものを長く使われる方が非常に多い。5年、10年、あるいは、子どものときに買った辞書を大人になっても持っている人もいますよね。すると、作り手の一つのミスが何十年にもわたって残ることになってしまうというところで、緊張感があります。
国語辞典は発行されたあと、4~5年単位で更新が行われます。教科書改訂に合わせての更新もありますが、「ブラウン管」「テレホンカード」など、もう使われることがなくなった言葉が用例の中に入っていたら、それを削除したり、国名やお金の単位の変更を反映させたりと、時代の流れに沿ったこまかい変更が更新の際に行われます。
辞書は鑑(かがみ)であり鏡(かがみ)
辞書は鑑(かがみ)であり鏡(かがみ)だと思うんです。言葉の規範となる「鑑」と同時に、現実の言葉の世界を忠実に映し出す「鏡」の二つの部分が辞典にはあります。
現代用語辞典などは、まさに今使われている新語を忠実に映し出す「鏡」の部分が大きいですが、一方、児童・生徒さん向けの辞書ならば、たとえば「すごい楽しい」は正しくは「すごく楽しい」であるといった、多少の間違った使い方が許容されている言葉に対して一応の正しい規範となる部分を示す「鑑」の部分が大切。そのあたりの「鑑」と「鏡」のバランスが辞典によっていろいろあるのかなと思います。
いわゆる書物よりも分厚くずしりと重い国語辞典。その一つひとつの見出し語や用例の奥には、引く人のことを配慮して言葉の意味をできるだけわかりやすく届けようとする作り手さんたちの努力があることがよくわかりました。みなさんも、お家に置いてある国語辞典を開いてみてはいかがでしょうか。面白い見出し語や、自分が主人公になっているかのような用例に出会えるかもしれませんよ。