子どものセルフイメージを高める関わり方[やる気を引き出すコーチング]

小学校の授業参観に行ってきたという知人が、こんな話をしてくれました。

「図工の時間でね、子どもたちがおのおのにお面を作る授業だったの。先生が一通り作り方を説明して取り組ませるんだけど、まあ、子どもだから、早くできる子と時間がかかる子がいるわけだよね。それで、先生がやたら、早くできる子をほめるわけ。『○○さん、もうできたの! 早いですね! みんなもがんばりましょう!』って。あれってどうなんだろうね? よくよく見ていると、遅くても、自分なりに工夫して上手に作っている子もいるんだけれど、『早くできてすごいね』なんて言われると、<早くできる>ことだけが<偉い>みたいな感じしない? たしかに、先生にも時間内に終わらせなきゃっていう段取りがあるとは思うけれど……」

なるほど! なかなか面白い視点での観察です。たしかに、こんなところから、子どものセルフイメージは、自然と植えつけられているのかもしれないなと思いました。



一つの「ものさし」だけで子どもを測らない

「早くできる」ことは、非常に大きな強みの一つです。でも、強みというものは決してそれだけではないはずです。今回のように、「お面を作る」という作業においても、決して早くはないけれど、細部にわたって丁寧に仕上げようとする子どももいれば、色の使い方が独特な子ども、周りの友達と仲よく楽しく取り組む子ども、散らかしたり汚したりしないように整然と進める子どもなどなど、いろいろな視点で見てみると、ほかにも「すごい!」子どもがまだまだいるはずです。そのおのおのに「すごい!」ところを、おのおのに伝えていったら、「人の偉大さは一つの基準で測れるものではないのだ」と、子どもたちも学習できるように思います。

とかく、「何でも早くできる子」がよい子、「遅い子」はダメな子、「勉強ができる子(=テストの点数が高い子)」がよい子、「勉強ができない子」はダメな子、と安易に見る傾向がうかがえます。そういう限られた「ものさし」だけで、子どもの価値を測定するようなことが、「ほかの人と比べて自分は……」という自己卑下を生み、セルフイメージを下げ、やる気も低下させているように思えてなりません。
多面的に子どもを見て、認めていくことが、子どものセルフイメージを高めていくのです。



個性の「メリット」のほうを伝える

今でこそ、人前で講演をするなどという仕事をしている私ですが、子どものころは、まったく内気で話せない子どもでした。今となっては、あまり信じてもらえませんが、本当に本当の話です。どうしてそうだったのかも、まったくわかりませんが、もう恥ずかしくて、人前で顔すら上げられませんでした。小学校低学年のころまで、授業中もまったく発言できず、じっと人の話を聴いているだけの子どもでした。子どもなりの劣等感も存分に味わっていました。
そんな私に、担任の先生が、「ほかの人の話をしっかり聴くことができるね。聴き上手な人はみんなから好かれるんだよ」と言ってくださいました。これは、今でもはっきり覚えています。こういう子どもに対して、「あなたは人前で話すのが苦手だね。それでは損をするよ」と言うのか、「しっかり聴くことができるね。人から好かれるよ」と言うのかでは、その子のセルフイメージに与える影響は天と地ほどの違いがあります。人生すら変えかねません。
今、私が、曲がりなりにも、「人の話を聴く」コーチの仕事をしながら、人前で話すことまで仕事としてできるようになったのは、このような先生の関わり方のたまものと、あらためて感謝に堪えません。

子どもは一人ひとりみんな違います。その子が持っている個性の「メリット」のほうを伝えるようにしていったら、子どものセルフイメージは確実に上がります。それが、一歩踏み出す原動力になるのです。

『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』
<つげ書房新社/石川尚子(著)/1,620円=税込み>

プロフィール

石川尚子

石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。近著『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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