中高生、大学生のインターネット依存、オンラインゲーム依存【前編】

お子さまがゲームに熱中するあまり、「ゲーム依存症になったら……」と心配されている保護者のかたも多いかと思います。オンラインゲーム依存症の実情について、久里浜医療センターでネット依存治療を担当する中山秀紀先生に伺いました。



スマホゲームは広く浸透しているものの、依存度は低め

久里浜医療センターは医療機関なので、軽症のかたから重症のかたまでさまざまな患者さんがいらっしゃいます。中高生から大学生くらいまでのかたが多く、典型的な重症なかたの相談は、オンラインゲームに没頭するあまり夜更かしをしてしまい、学校に遅刻してしまったり、学校に通えなくなってしまったりしたというものです。
ここ2~3年は、スマートフォンを使ったゲームの相談が増えています。ただ、スマートフォンの場合は単純な性質のゲームが多く、パソコンを使ったオンラインゲームほど性能が高いものや複雑なゲームは少ないため、依存度は比較的低い傾向にあります。



オンラインゲームは「終わり」がない

パソコンを使ったオンラインゲームの最も大きな特徴は、「終わり」がないということ。最近では専用のゲーム機も通信機能が備わったものが大半になってきました。インターネットに繋いでいないゲームにもさまざまな種類がありますが、典型的なものは同じゲームを1か月間ほどやり込み、クリアしてしまえば次第に飽きてくるものでした。ところが、オンラインゲームの場合は、ゲーム会社から新しいストーリーやアイテム、敵がどんどん追加されるため、「終わり」がありません。また、不特定多数の人とオンラインで繋がりながらゲームを進めていくため、「自分が先に寝てしまうと同じチームの仲間に迷惑がかかる」と考え、なかなか途中でやめられないことがあります。



オンラインゲームに夢中になる仕組み

オンラインゲームに依存してしまうきっかけは、もともとゲームが好きであったり、学校生活がうまくいかなかったりする場合などが多いようです。
ゲームというのは、現実の社会とは違い、一定の時間をかけてある程度の努力をすることで比較的簡単に目標を達成しやすい世界です。たとえば、現実では「成績を上げる」という目標を設定したら、たいへんな努力を払わなければなりません。ところが、ゲームの世界では、世界中を冒険したり、優秀な武将になって天下を統一したりといった目標が比較的達成しやすく設定されています。ゲームに夢中になるあまり、勉強や学校生活などがうまくいかなくなってしまい、ますます目標達成のしやすいゲームにのめり込む、といった悪循環を生んでしまうこともしばしばあります。

このような悪循環を生みださないためには、ゲーム以外の実生活でやりがいを見出すことが大切になってきます。中高生なら部活などでもよいし、大学生ならアルバイトやサークル活動でもかまいません。社会的な活動に重点を置くことで、そちらに義務感がわくようになり、自然とゲームと距離ができるようになるのです。

また、意外に多いのが、ゲーム依存という入り口から、発達障害の一種である「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」(※)が発覚すること。直接お子さまと接している保護者のかたが思い当たることがあれば、スクールカウンセラーやお近くの小児科・心療内科・精神科に相談してみることをおすすめします。

次回は、オンラインゲーム依存症のチェックポイントと予防法についてご紹介します。

※注意欠陥・多動性障害……年齢や発達に不釣り合いな不注意さや衝動性、多動性を特徴とする発達障害のこと


プロフィール


中山秀紀

独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター医師。岩手医科大学医学部卒業。2004年、同大学院卒業。その後、岩手医科大学神経精神科助教、盛岡市立病院医長などを経て2010年より久里浜医療センターに勤務。2011年よりインターネット依存治療に携わり現在に至る。

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