知識の詰め込みではなく実社会で役立つスキルを 指導要領改訂のポイントとは
下村博文文部科学相が2014(平成26)年11月、中央教育審議会に学習指導要領の改訂を諮問した。2016年度中に答申をまとめ、新しい教科書を発行したうえで、小学校を皮切りに、中学校、高校と順次、全面的な実施に入る予定だ。改訂の目的などについて、教育ジャーナリストの渡辺敦司氏に聞いた。
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今回の改訂は、小学校は2020(平成32)年度、中学校は21(同33)年度、高校は22(同34)年度の入学生から順次、実施に入る見通しです。最大の眼目は、学校教育の重点を「何を教えるか」から「何ができるようになるか」に転換すること。そして、そのために「総合的な学習の時間」のような学習方法を全面的に展開することだといえるでしょう。
諮問理由の中に、「育成すべき資質・能力を子供たちに確実に育む観点から、そのために必要な学習・指導方法や…(中略)…学習評価を充実させていく観点が必要」との一文があります。これからの時代に必要な資質・能力を「~ができる」という形で明確にし、学校の教育活動全体をとおして、実社会の中で役立つ力にまで高めようという考え方です。
そのために、課題の発見・解決に向けて主体的・協働的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」(能動的学習)という学習方法も検討されます。基礎・基本となる知識を軽視しているわけではありませんが、すべてを教え込むだけでは、社会で生きて働く力にはならないという考え方も込められています。テスト直前に必死に覚えるといった勉強の仕方は転換を迫られることになるでしょう。
諮問理由では、これからの時代に必要な資質・能力について、経済協力開発機構(OECD)の「キー・コンピテンシー」(主要能力)や国際バカロレアのカリキュラム、復興教育などを例に挙げています。また、今回の改訂は、「生きる力」の育成を目指した今の指導要領の趣旨を徹底しようという側面もあります。改訂を待たず、授業に影響を与える可能性もあるでしょう。
出典:次の指導要領、「何を教えるか」から「何ができるようになるか」へ -ベネッセ教育情報サイト